ベビーマッサージは、発達心理学に基づく母子の心の営みです
そもそもベビーマッサージというのは、お母さんと赤ちゃんの「心の交流」を促す営みです。心理学では、この心の交流をアタッチメントと言います。これは、1970年代に心理学者のジョン・ボウルビーによって提唱されたものです。
「お母さんにとって、良いことづくめのアタッチメント」
アタッチメントをたくさん育むと、様々な良い効果があります。お母さんは、赤ちゃんと言葉を超えてつながることが出来るようになります。これは、子育てを楽しくしれくれるだけでなく、ラクにしてもくれます。例えば、赤ちゃんの泣き声ひとつで、赤ちゃんが何を欲しがっているのかわかるようになります。おっぱいが欲しいのか、オムツが汚れていて不快なのか、抱っこしてほしいのか、ねんねしたいのか、赤ちゃんがなぜ泣いているのかが、わかるようになってしまうのです。ウソのようですが、本当の話です。生まれてすぐから、伝統的に赤ちゃんにマッサージを行う習慣を持ち、さらに3歳までは、赤ちゃんをお母さんの体に密着させ、ひと時も離れることのない子育て習慣を持つウガンダのお母さんは、赤ちゃんが泣く前にその欲求をかなえてしまうので、オムツを濡らすことさえないと言います。ウガンダのこうした子育て習慣は、まさにアタッチメントを豊かに育むものです。アタッチメントによって、お母さんには、それだけの能力が芽生えるのです。
良いことは、それだけではありません。ベビーマッサージなどのアタッチメントを育む営みをしていると、お母さんの体の中にオキシトシンと呼ばれるホルモンが分泌されます。このホルモンは、おっぱいの出を良くしてくれたり、精神安定効果や癒し効果をもたらしてくれるもので、通称「育児ホルモン」と呼ばれています。また、アタッチメントは、お母さんに「この子が生まれてくれて本当にありがとう!」という理屈を超えた感謝の気持ちと無償の愛の気持ちを起こさせてくれます。アタッチメントは、こうして、お母さんの子育てを「楽しく」「ラクに」してくれるのです。
「赤ちゃんにとって、良いことづくめのアタッチメント」
アタッチメントの恩恵は、お母さんだけのものではありません。赤ちゃんにも良いことがたくさんあります。お母さんとのアタッチメントが豊かに育つと、赤ちゃんはとても情緒が安定した子どもに育ちます。それは「やさしい」とか、「共感的」、そしてコミュニケーション力に長けているといった特徴へとつながります。それだけではありません。アタッチメント豊かな子は、探究心、好奇心が旺盛で、理解力、応用力、問題解決力が高く育ちます。それは、大きくなって「頭がイイ」という特徴につながっていきます。
「アタッチメントを育むのに最も適した営みがベビーマッサージです」
このアタッチメントは、生後から1年の期間に最も活発に形成されます。つまり、0~1歳の時期にアタッチメント形成を意識するのが望ましいわけです。そのために最も簡単で、最も手軽で、最も楽しいのがベビーマッサージです。ベビーマッサージをやっているお母さんの中には、やり方や順番を間違えたら怖いとか、手技に自信がないとか、手先が器用でないといったことを心配する方がいますが、そんな心配は、一切必要ありません。
私は、お母さんには、「順番を間違えても、やり方を間違えても、多少ぎこちない手つきでも大丈夫、全く問題はない!」と伝えていますし、実際にそうです。ベビーマッサージは、心の交流です。お母さんが、赤ちゃんの体をやさしく撫でる。それによって、お母さんも、赤ちゃんも気持ち良い、それがベビーマッサージです。いろんな難しいことを言う方もいますが、私はこれに尽きると考えます。これ以上に良い効果はありません。実際、当協会のアタッチメント・ベビーマッサージのメソッドの基となっているアーユルヴェーダにおいても、赤ちゃんに対するマッサージについては、やはり同じです。やさしく撫でる、赤ちゃんを愛でる、心の動きに注目する。それが、ベビーマッサージなのです。
ですから、ベビーマッサージ教室で、お母さんに対して、あまりにも厳格に指導するのは、非常にもったいないことなのです。そもそも、優しく撫でることに、危険性などあるわけがありません。順番を間違えても、何の悪影響もありません。そんなことよりも、厳格であるがゆえに、お母さんがリラックスして楽しめなければ、何の意味もありません。
ベビーマッサージは、「やると良いことがたくさんあるのに、やって悪いことは一つもない」アタッチメントの営みなのです。
ベビーマッサージが注目されてきた昨今ですが、それに伴い、様々な誤解や曲解が生まれているのを、目にし、耳にもします。だからこそ、わたくしども日本アタッチメント育児協会は、「心の交流」というベビーマッサージ本来の価値と意味を、これからも伝えていきたいと思います。