小学生は、机にかじりつくな!

小学生のうちは、あまり勉強しないくらいが丁度いい。勉強は大切だが、遊びからは、もっと多くを学べる。小学生の脳は、そのように出来ている。机上の勉強から多くを学べるようになるのは、12歳以降。小学生で勉強に疲れてしまっては、中学という机上の勉強の旬の時期に、勉強嫌いになってしまう。 小学校のときは、勉強がよくできたのに、中学に入って、めっきり落ちこぼれてしまった、という例は、意外と多い。この背後には、以下のようなメカニズムがある。 小学校の勉強というのは、勉強したかしないかが成績を分ける。基本的には、「読み書きそろばん」である。これらは、反復演習と記憶力の賜物であるので、やらなければ、身につかない。だから、小学生にとって、勉強は大事だ。「読み書きそろばん」の基礎が出来ていなければ、その後の教育は、全く成り立たない。 しかし、勉強よりももっと大切なものがある。それが「遊び」である。このように言ってしまうと、安っぽく聞こえるかもしれないが、私は、この持論に、きちんと根拠を持っている。育児セラピスト1級の受講生に、最も持ち帰ってもらいたい概念でもある。 学童期の子どもの学習プロセスは、大人とは違う。論理性の面では未成熟なのだが、その反面大人よりも直感的で、創造的で、イマジネーションに溢れた学習プロセスを経て、物事を理解し、より高度な学びを得る。つまり、頭で考えるよりも、体で感じて理解する。子どもは、複雑な概念さえも、感覚的に体で理解することができる。 例えば、補助輪なしの自転車に乗る場合、止まっているときには、足で支えないと倒れてしまう。少し走り始めると、ヨロヨロするが、支えはいらない。スピードが乗ってくると、自転車は安定する。言葉にすると当たり前のことであるが、これを論理的に説明しようと思うと、「遠心力」や「慣性の法則」などといった難しい話になるのである。では、子どもが自転車に乗るとき、「重力」や「遠心力」、「慣性の法則」を知っているから、安心して、二輪の自転車を操縦しているわけではない。子どもは、感覚的に、体で覚えているのだ。だから、止まっているときは足で支え、動き出しは、左右にハンドルを切って調節して、やがて、スピードが乗ってくると、手放し運転さえできたりする。つまり、高度な論理に裏づけされた概念を、論理ではなく、体で理解している。そして、それを楽しんでいる。 「体で感じて理解し、学び、楽しむ=遊びから学ぶ」これこそが、学童期の子どもの「学習プロセス」です。もちろん、ベースに「読み書きそろばん」があってのことなのですが、ベースは、あくまで、ベースですので、必要十分を満たしていれば良いのです。より高度な概念を獲得したり、より複雑な理解を得たりするのは、「体を使った遊び」を通してのことですので、これに関しては、遊びすぎても、遊びすぎることはない。そうして、いっぱい遊んで、いっぱい学ぶことによって、応用力や問題解決力が身につく。 学童期に身につけた読み書きそろばんといった基礎学力に、応用力と問題解決力が加わることで、中学に入ってからの机上の勉強が生きてくるのです。 小学生のときに、遊びの時間を削って、勉強をしていた子どもは、記憶と反復に基づく基礎学力は、身についているが、「体で学ぶ」ことが不足しているため、応用力が身についていない。すると、より高度な学習内容に取り組む中学生になって、困難を覚えることになる。しかも、遊ぶ時期に遊んでいないので、遊びへの渇望と、勉強に対する疲れによって、勉強嫌い、遊び好きになる傾向がある。 われわれ大人が、教育について考えなければいけないのは、学童期の子どもに対して、「読み書きそろばん」と「遊び環境」を、どのように与えられるかであり、「子どもには子どもの学び方がある」ことを、いかに理解するかではないだろうか。

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