心の病の時代に必要なモノ

先日、こんなニュースを耳にしました。
保育園(幼稚園だったか?)の園長先生が、焼身自殺で亡くなりました。
自殺の理由は、園児の親からの執拗な抗議に耐えかねたそうです。

子どもが、あるとき園でケガをして、引っかき傷を作って帰ってきたそうです。それに対して、その親は、「子どもにケガを負わせた!」と猛烈に園に抗議し、園長を糾弾したそうです。かなり、痛烈な内容の抗議文を内容証明で送りつけたりもしたそうです。
「二度と子どもにケガを負わせることのない様に、しっかり監督していなさい」
というわけです。実際に、その園では、終始、保育士さんが、子どもを見張り、ケガのないようにもしたそうです。

こうした状況を苦にしての、園長先生の自殺だったそうです。焼身自殺という方法を選んだ気持ちの奥には、執拗に自分を糾弾した親への抗議の気持ちがあったのかもしれません。いずれにしても、やりきれない現実が、保育園の現場で起きていることは確かです。

実際には、子どもをのびのびと遊ばせてあげて、体と心のバランスの良い発達を願うなら、多少のケガはつき物だと思います。それよりも、大人が先回りして、危険を回避させてしまうことのほうが、よほど不健全だとボクは思います。もしかしたら、園長にも、そんな気持ちがあったのかもしれません。

マスコミは、この事件を、「モンスターペアレンツによって自殺に追い込まれた園長」という切り口で報道し、異常行動をとる親の問題を取り上げていました。その方向性は、正当なものであると思います。
この親は、明らかに「モンスター・ペアレンツ」なのだと思います。

でも、私は、マスコミの視点とは少し違う視点で、この事件をとらえています。
「なぜ、この親は、モンスター・ペアレンツになってしまったのか?」
それを考えると、モンスター・ペアレンツは、決して特殊な人種ではないのかもしれない、と思えるのです。抑圧された心の負のエネルギーが、発言力の弱い存在へ、そのまた弱い存在へと吐き出されていく社会構造の現実が読み取れると思うのです。

ここからは、あくまで、私の想像と推測の範疇を超えませんが・・・
園長を自殺に追い込んだ親は、内容証明という極めて高度な手法を使いその文章も(公開されたものを読むと)非常に巧みで、高度で、学力の高い人によるものであると想像できました。同時に、根深い「陰湿さ」を感じます。
それは、「いじめ」のようでもあります。でも、もしかしたら、この親も、実は会社で、上司から同じように陰湿に、無理難題を突きつけられていたかもしれません。そして、そのまた上司も、そして、その会社は、親会社から、無理難題を言われて悩んでいたかもしれません。

つまり、弱いものへ、発言力の少ないものへ、抑圧された負のエネルギーが吐き出されている構造です。この親は、もしかしたら、園長を抑圧のはけ口にしていなかったら、もしかしたら、子どもに向かっていたかもしれません。そして、虐待することになっていたかもしれません。

何が言いたいのかといいますと、誰しも、被害者にも、加害者にもなり得るということです。そういう構造を、わたしたちは、社会の中に持ってしまっているということではないでしょうか。
それは、次の時代を担う子どもたちの「成長の場」である保育園や子どもたちにとっての「安全地帯、安息の場」であるはずの家庭で起こっています。

そんな状況の中で、健やかな子育てをしていくことは、簡単じゃない時代に入ってしまっていると思います。そして、親は、自らの「心のバランス」「精神の健全性」を、保つことが必須条件であると思います。
そして、私は、心の底から信じています。「子育て」そのものが、親の「心のバランス」と「精神の健全性」を保つ営みであると。

江戸時代より昔は、社会の構造によって、放っておいても、子育てによって親は生かされ、親として人間成長して、その子どもたちが、次の時代を作る役割をしてきたのだと思います。でも、現代は、高度経済成長期以降、そうした社会の構造を捨ててしまってここまで来ています。

だからといって、それを嘆いて、懐古主義になるのではなく、今の時代にあった「バランスの良い子育て」を探ることが、必要だと思います。
今さら大家族に戻れと言われても、そう簡単にはいきませんから。そのひとつの答えとして、これからは・・・
「親が、親になることを学ぶ」ことが、大事だと思っています。

その対象として、私は、精神医学や発達心理学、社会学、コミュニケーション学といった学門が、有効だと思っています。 そうした学門から、過去の叡智を振り返り、新しい知恵を見出すことだと思います。
フロイド、ボウルビー、シュタイナー、モンテッソーリなど過去の偉人たちの教えは、今も真理であり、それらは、かつて、大家族の時代には、おばあちゃんが嫁や孫に伝えいたことにつながる教えです。そこから学べることは、子育てを楽しく、意義の深いものにしてくれます。そして、「生まれてきてくれてありがとう!」と心から思わせてくれます。

これらを、学門知識としてではなく、子育ての知恵として、勉強としてではなく、体験として、取り入れることによって自分も、そして子どもも「心が病んでしまう社会構造」に巻き込まれない環境を作れると思っています。

そんな思いから、医師の先生や、心理学の先生、その他の学術分野の先生たちと共に作ったのが、トータルアタッチメントケアのプログラムです。
そこには、発達心理学もあれば、夫婦関係論もあり、コミュニケーション学もあり、社会や時代を読むために社会学も盛り込まれています。
それを、新米ママに教え導くのがTACファシリテーターです。このファシリテーターは、子育てのご意見番のような役割を担い、コミュニティを形成していきます。

TACファシリテーターについて興味のある方は、こちら

//www.naik.jp/info/class/tac.html

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

コメントを残す

このページの先頭へ