これからの「子育て支援」のあり方について考える

私は、「子育てを仕事」にして、「金銭的報酬をもらう」ということが、これからの社会において、非常に重要なことであると考えます。

サービスを提供する側は、料金を頂戴する以上、それに見合う、または、それ以上のものを提供しなければなりません。また、サービスを受ける側は、お金を払った以上、料金に見合ったものを得ることに真剣です。
こうした緊張感のある関係が、「子育て」における、深い学びを提供し、本質的な価値観を伝える上で、非常に大きな原動力になると考えるからです。

一方、政府主催の○○シンポジウムや、愛知県支援事業□□などの無料のイベントやボランティア事業において、運営側が通り一遍等で、予算消化先にありき、誰の学びにも支援にもなっていない、また、利用する側も、「無料だからこんなものか」と、参加したことのみに意義を見出す、そんな場目に出くわしたことはないでしょうか?
単なる予算消化のために、子育てとは無縁の担当者が企画した、社会的なキーワードを盛り込んだだけのイベントに、莫大な予算がつぎ込まれ、だれの役にも立っていない、などということが、いかに多いか、わたしは、協会を立ち上げて、嫌と言うほど知りました。

NPO法人を立ち上げ、助成金の申請をして、運よく助成金がおりると、その予算を消化するために、無理やりイベントを企画するという例は、枚挙に暇がありません。
これらの例は、イベントの内容そのものに、問題があるわけではありません。
実際、これらのイベントやセミナー、シンポジウムの出演者やその内容は、非常に貴重なものであることが多いと思います。内容ではなく、「提供する側と参加者の温度の低さ」に問題があるのです。
もちろん、中には、非常に盛り上がり、そして社会的に重要な役割を担っているボランティアイベントや団体もたくさんあります。一体何が違うのでしょうか?

政府や地方公共団体の支援と
NPO法人やボランティア団体の支援の違いはなにか

それは、取り扱うテーマが違うのです。何か問題を抱えた人のために、それを解決する、そうした人たちを支援するためのイベントや団体は、提供する側も、参加する側も、非常に真剣そのものです。それは、必要に迫られている人だから、提供する側も、生半可な気持ちでは関われないためです。

そうした、崇高な理念を持って、問題を抱える人を手助けしようと取り組んでいるNPO法人やボランティア団体の活動家達は、手弁当で、むしろ自らの資金と時間を持ち出して活動に従事して、本業(仕事や主婦業)とボランティアの二束のわらじに疲れきってしまうという現状もあります。
無駄な予算消化のためのイベントを開催するなら、こうした人たちに、もっと助成金を出して、専任スタッフを抱えて余裕のある運営をしてもらうように、政府や地方公共団体は支援するべきだと、私は、個人的には思います

ところで、トータルアタッチメントケアで取り扱うテーマは、「よりよい子育てを提案する」とか、「病んだ子供を作らないという予防的な試み」といったスタンスです。つまり、いま現在問題を抱えている人を対象にしていません。つまり、必要に迫られていないので、緊張感が欠けるわけです。「別にいいや」になりがちなのです。
でも、こうしたテーマにおける子育て支援が、現代においていかに重要であるかは、この講座の社会学のところで学んだとおりですし、愛着障害などの点でも、非常に重要な活動であると言えます。だからこそ、先に述べたように、緊張感を持つ「しくみ」が必要なのです。

緊張感を持つ「しくみ」が必要

具体的に言えば、きちんと金銭的報酬を介在させて、サービスを提供すること、お金を払って参加すること、この関係のもとに行われることが重要なのです。そして、このような団体は、助成金に頼らず、自らの活動が生み出す収益によって、継続的、永続的に運営されるべきだと思います。
このように、「非営利活動」として行われるべきテーマと、営利活動として行われるべきテーマは、違っていて、はっきりと棲み分けがされる必要があります。つまり、「問題解決型の理念」に基づく活動は、非営利で行われ、「予防型やベターライフ型の理念」に基づく活動は、営利活動として行う必要があるのです。

しかし、こと「子育て支援」においては、この棲み分けは、非常にあいまいで、混沌としています。たとえば、「発達障害児を持つ親の会」と「親子で楽しむベビーマッサージ講習会」が、同じ非営利の土俵に乗っているのが現状です。
これは、政府の助成金交付の際の対象事業の絞込みに問題があると、私は考えます。
余談ですが、同じことは、福祉の舞台でも起こっています。

とはいえ、今後、「子育て支援」においても、こうした棲み分けは、急速に進んでいきます。なぜなら、非営利活動ベースで行うベターライフ型の子育て支援(ベビーマッサージなど)は、提供者も参加者も温度が低く、それゆえに、温度の高い、より学びの深い営利活動ベースのサービスの方に、関心が集中するからです。
お金を払っても、より志の高い、学びの深い「場」に参加したいと思うようになるからです。そうなると、「非営利のベターライフ型子育て支援」の淘汰が急速に進むと考えます。

最後に

最後に、私は、非営利でベビーマッサージを提供することを批判しているのではありません。ただ、ベビーマッサージのような「ベターライフ型子育て支援」に対して、助成金が交付されて、「無料だからいいや」的な「場」が多く形成されることには、問題を感じます。
もしも非営利で行うなら、有志によるママサークルなど、個人レベルで行われるべきで、そこに助成金の交付は必要ないと思うのです。そうしたベターライフ型の活動をする団体に助成金を交付することを止めて、問題を抱えている人の支援をする団体に、より多くの助成金を交付する方が、よほど社会のためになると思います。

ちなみに、当協会の「トータルアタッチメントケア・プログラム」も、ベターライフ型子育て支援ですので、助成を受ける方針はありません。
「ベターライフ型子育て支援」の場合、提供する側と、受ける側が、真剣に緊張感を持った関係を築くために、営利活動であることが重要だと思います。「料金を頂戴するから満足してもらう、お金を払ったのだから、もとをとる」という関係性で行われるべきだと思います。そうでないと、続けてもらえないし、何の役にも立ててもらえないのです。

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