子どもに「電子」は触らせるな!(1)

 最近、乳幼児期の子どもに、スマホやタブレットで遊ばせる親が増えているようです。確かに、1歳や2歳の子どもが、iPhoneなどのスマホ を自分で操作して遊んでいるのを見ると、「すごい!、この子は天才か!」と親は思うかもしれません。子どもが指をスライドさせて、ロックを解除し、アプリを起動して、遊ぶという一連のプロセスは、認知の発達を感じさせます。実際、そういう側面はあると思います。また、iPad などのタブレット端末を幼児教育の現場に取り入れる幼児教室もあるようです。3歳や4歳の子どもたちが、タブレットを使ってお絵かきをしたり、スタンプを押したりします。まさに、幼児期から最新電子機器を使いこなす「サイバーキッズ」です。親から見たら、やはり「時代の先端を歩んでいるな~」と感慨深いことでしょう。

 しかしながら、これらは子どもの発達における体験として考えると、やはりズレていると言わざるを得ません。むしろ、「子どもにとって、相応しいアクティビティではない」という言い方の方が的を射ているかもしれません。
 
 そもそも、子どもがスマホ で遊ぶことが出来るのは、その子が天才なのではなく、スマホが、乳児でも操作できるくらいイージーだからです。その証拠に、スマホで遊ぶことのできる1歳児は、全く珍しくはありません。むしろ、誰でも出来ることです。実は、この誰でも出来る「イージーさ」が問題なのです。
 スマホ の操作は、力や器用さを必要としませんし、力の加減や操作のスキルも要りません。画面上で指をスライドさせたり、タップしたりするだけです。つまり、画面をペタペタやっていれば、どこかで、ロック解除できてしまい、さらにペタペタやっていると、アプリが起動できてしまうのです。

 しかし、このスイッチの役割をしているものは、画面上のアイコンでしかありません。つまり、子どもには、スイッチを押した感覚はないのです。ただ、結果として画面が変わって、お目当てのものが出現するというだけです。つまり、「バーチャルな体験」なわけです。これは、スイッチを押すと音が鳴るような玩具で遊ぶ体験とは全く違う体験です。実際の「スイッチ」は、出っ張っていて、オスと引っ込みます。離すと戻ります。そして、ボタンの真ん中を真っ直ぐに、ある程度の力を入れて押さないと作動しません。これは、物理現象を伴う「リアルな体験」です。言うまでもなく、乳幼児期の子どもに必要なのは後者の体験です。「バーチャルな体験」は、本来必要な物理的要素が、バーチャルに変換されて抜けてしまっているのです。それは、つまり「ゆがめられた体験」なのです。
 さらに、こんなのもありました。iPad のテレビ電話で、田舎のおばあちゃんが、子どもの相手をするというのです。その間、お母さんは安心して家事が出来て大助かり。今では、3歳の子どもが、自分でiPad を操作して、おばあちゃんとテレビ電話しています、というのです。これもやはり、画面のおばあちゃんは、二次元であり、匂いや気配、息遣い接触といった物理現象を伴わない「ゆがめられた体験」です。

 

(パート2へ続く)

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