母親としての想いがつまった 「親子の愛着と対話を育む性教育」で活動中
滋賀県にお住いの原井有加さんは、看護師としてNICU、GCU、小児科外来、保育園に勤務したご経歴をお持ちです。
出産をきっかけに2018年にアタッチメント・ベビーマッサージ講座を受講され、そのほかにも当協会の4つの資格(子育てマインドフルネス、育児セラピスト、キッズマッサージ、心理カウンセラー)を取得されました。
そんな原井さんは、現在、対面とオンラインで0~6歳のお子さんをもつお母さんたちを対象にアタッチメント形成や発達心理学をベースにしたオリジナルの「性教育講座」を開催されています。
原井さんが、オリジナルの「性教育講座」を始められるに至ったきっかけと現在のご活動について報告をくださいましたので、ご紹介します。
思い通りにいかない育児に疲弊
原井さんは、看護師というプロの立場で親子に関わってきた経験から、自分の子育てには強い自信がありました。
「出産して、さぁ楽しい育児が始まる!赤ちゃんも子どもも大好きだし、プロなんだから任せなさいと言わんばかりに希望に満ち溢れて育児をスタートさせました。まだ希望に満ち溢れていた頃に、我が子にベビーマッサージをしてあげたいという想いでアタッチメント・ベビーマッサージ講座を受講しました。」
ところが、現実は思うようにはいきませんでした。これまで努力したらどうにかなってきたことも、「育児だけは思い通りに行かない・・・どんなに頑張っても結果が出ない・・・」と焦燥感を抱いたそうです。
それに加え、結婚して生まれ育った土地を離れたことや、夫の帰りが遅いこと、元々頑張り屋さんで頼れない性格だったこともあり、娘さんが1歳を過ぎて自我を出すようになると、どんどんイライラして気持ちが不安定になり、ノイローゼのような状態になっていったといいます。
心理カウンセリングが転機となる
そんななか、限界を感じた原井さんは、心理カウンセリングを受けました。それがきっかけとなり、少しずつ自分と向き合うことができるようになっていったそうです。
当協会の「子育てマインドフルネス」をはじめ「育児セラピスト」「キッズマッサージ」「心理カウンセラー」も2018年から2022年にかけて受講され、子育てへの学びもさらに深めていかれました。
「『こうした方がいい!これは子どもに悪い!』など、嫌でもあちこちから入ってくる情報に戸惑うこともありましたが、おかげでなんとかここまでお母さんを続けてきました。」
“性教育”との出会い
現在、2人の娘さんの母親となった原井さんが「性教育講座」を開くことになったのは、「娘に望まない妊娠をしてほしくない」との思いからだったといいます。
「もともと看護師として働いているときから、性教育に興味があったので、出産を機に学んでみようとネットで検索して見つけた講座(1日間)を受講しました。そこからは、自分なりに本を読んだり独学で学び続けています。娘たちにも実践しており、親子関係によい影響がありました。」
アタッチメントと性教育、通じ合う学び
原井さんは、当協会で得た子育てへの学びと、ご自分で学ばれた性教育をご家庭で実践してきたこの5年間で「どちらも通じ合っていて、人の土台となる本質的な学びである」と確信したといいます。
「例えば、アタッチメントを深めて子どもにとって安心安全な存在でいることは、どんなことでも相談しやすい親子関係につながります。私が日々、実践している性教育(性教育の絵本の読み聞かせ、子どもの性への問いかけにその都度向き合うこと、性の話をタブーにしないこと、話しやすい関係づくり、体の仕組みやいのちの誕生を伝えることなど)は、娘とのアタッチメント形成そのものだと思っています。」
さらに、育児セラピストで学んだ発達心理学、とりわけ「フロイトの幼児性欲理論」、「エリクソンの心理的発達課題」は原井さんが性教育を学ぶ際の大きな手助けになっているといいます。
「性教育では、トイレトレーニングの時期とも重なるので、2~3歳のころから子どもに伝えていくのが一番いいと言われています。「肛門期」「男根期」、乳幼児期の心理的発達課題を知っているからこそ、それが理にかなっていると理解できました。根拠がわかり、どういう関わりがいいのかも理解できていることで、娘の成長や発達の後押しができていると感じます。両方の学びがつながった!ととても感動したことを覚えています。」
ベビーマッサージの「いいタッチ」が「はてなタッチ」のアンテナになる
さらに、性教育では「同意をとってから、相手に触れること」をとても大切にしており、それはベビーマッサージでの学びとも共通すると原井さんは感じています。
「大人対大人では、当たり前かもしれません。子どもに対してもそれは大切なことだと思っています。ベビーマッサージでは、必ずアファメーションから入ると学びました。日々の育児の中でも赤ちゃんに『抱っこするね』とか『おむつかえるね』とか、声をかけてから触れるのは、子どもにとって安心感や自分は大事にされているんだと感じる心を育むことにつながると思っています。」
また、性教育では、防犯について「いいタッチ」「悪いタッチ」「はてなタッチ」という表現があるそうです。
「ベビーマッサージは子どもにとっては、お母さんに触れてもらう、マッサージしてもらう、すごく心地よい時間です。そうした『いいタッチ』をたくさん経験していると、なんか変かも、気持ち悪いかもっていう『はてなタッチ』に気づくアンテナを育てることにもつながると思っています。ベビーマッサージの触れるというマッサージ行為そのものが、性教育の視点でみると乳幼児期からたくさん『いいタッチ』を経験することになると思っています。」
アタッチメントと発達心理学をベースにした性教育講座
原井さんは「ほかのお母さんたちにも、こうした知識を知ってもらうことで、乳幼児期からのお子さんとの関わりがもっとよくなるといいな」との思いから、活動を始められたそうです。
「私がお伝えしている性教育とは、自分も相手も大切にしながら、健康に安全に幸せに生きていくために大切な知識とスキルをお伝えするものです。0~6歳のお母さんを対象にお伝えしています。」
今年の4月からは、対面で地域の育児情報誌を通してママ向けの講座をしたり、月に1度、同じ地域で活動されている保育士さんとコラボして、レンタルスペースでママの交流会を開かれています。
「触れ合い遊びやベビーマッサージをはじめにやったりするので、そのなかで性教育の知識もお伝えして、お母さんたちにちょっとずつ『性教育って乳幼児期からできるんですよ』だとか、『お子さんに性に関することを聞かれたときに、こういう風に対応してあげるといいですよ』とお伝えしています。」
幼稚園でのお話会が実現
さらに、「これからは、もっと子どもたちや地域のお母さんたちに伝えていきたい」と、保育園や幼稚園に、直接お声がけをされているそうです。そのかいあって、ご自身のお子さんが通う幼稚園では、この冬に性教育のお話をされることが決まったといいます。
知識を持つと行動が変わる
「お母さんたちからは、乳幼児期から何をしたらいいのか、何かできることなんてあるのかと思っていたと言われます。やっぱり小さい時からアタッチメントの土台を培ってきていれば、命の始まりのお話だったり、思春期を迎えたときの体のことを伝えられたりだとか性犯罪のような怖い話も、家庭でオープンな関係が築けているからこそ話せるよねっていうご感想がすごく多いです。」
子どもの問いかけに、「自信を持って安心して答えられるようになった!」「伝え方が変わってきた」と言われるとすごく嬉しいと原井さんはお話されています。
「私自身も乳幼児期の子をもつ母親なので、”先輩ママ”のように感じていただいているかもしれません。実際にこういう声かけをしたら自分の子どもに効果的だったとか、実践を伝えられますし、医療者としての知識だったり、育児セラピストとしての学びもすべてを組み込んでいるので、それが私の講座ならではの特長になっています。」
すべての土台は親子のアタッチメント
2023年の全国大会にも参加された原井さん。基調講演『川の向こうにわたって“世界の中のワタシ”を育てる』というテーマは、ご自身の活動でも活かしていきたい内容だったとお話されています。
「私が伝えている『一人ひとりが特別な存在で自分も相手も大切にする』ことも、一人ひとりが自分らしく輝いて“世界の中のワタシ”となって活躍できる人材を育てることにもつながっていくと感じました。」
原井さんはこれからも、現在のご活動を通して親子のアタッチメントの大切さや日々の性教育の実践を伝えていきたいとお話されています。
「乳幼児期から始める性教育を通して、今後も親子の愛着形成と対話を育みながら、健康に安全に幸せに生きていける土台づくりに貢献していきたいです。」
原井さんのご活動の様子は、こちらからもご覧いただけます。
https://www.instagram.com/yunsophila/
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