不登校:子どもの『いきたくない!』にどう対応する?③

不登校についての理解を深める


これら3つの貴重な体験談をもとに、こんどは、不登校というものを「理解する」ための3つの視点についてお話ししたいと思います。


誰でも通る道

不登校は、どの子にも起こり得ます。どんな子だって「学校に行きたくない」というときは、あるものです。その状況が閾値を超えるまで高じてしまった時、不登校となるわけです。

ここで大事なのは、親の側の心構えです。子どもが「学校に行きたくない」と言ったときに、大騒ぎしてはいけません。これは、誰にでもあることですので、「うちの子は、今日来たか!」くらいに考えてください。その対応については、のちほどお話しします。

間違っても、焦って無理やり学校に行かせようとしたりしてはいけません。とくに、お子さんが“最初に”言い出した状況での対応は、とても重要です。「行きたくない」気持ちを認めてあげて、話しを聞いてあげて欲しいのです。


本当の原因

子どもが表面上で言っている理由は、本当の原因ではないかもしれません。「友だちとけんかした」「意地悪された」「ピアノができない」「逆上がりが出来ない」・・・さきほどの3人目のお子さんの例のように、学校に行きたくない子どもの理由が、毎日のようにコロコロ変わるということは、よくあります。むしろ、不登校の大半は、その理由が曖昧です。「なんとなく」「だるい」「なぜかわからないけど行けない」本人さえも、理由が分からないのです。当然、親や先生にもわかりません。

表面には見えないところ、顕在化していない無意識の領域に、本当の原因がある場合、時間をかけて、それを解決する必要があるのです。なんらかのストレスやプレッシャーかもしれません。過去に心の奥底で蓋をされた「傷」や「寂しさ」の場合もあります。いずれにしても、一朝一夕で見つけられるものではありません。多くの時間と、膨大なコミュニケーションによってしか、解決できない代物です。この時、解決の糸口となるのは、「コミュニケーションが不足していなかったか?」「自己肯定感や受容感が危機にさらされていないか?」という視点です。

逆に、2番目の小4のお子さんのように、行きたくない理由が、「1型糖尿病であることと、まわりの人にお願いしなければならいことを説明すること」というようにはっきりしている場合は、むしろその解決策はシンプルです。


子育てを振り返るチャンス

不登校を「子育てを振り返るチャンス」と捉える。理想を言えば、最初に「行きたくない!」と言ったときに、この視点で捉えることです。そうすれば、不登校にまでならなくてすむ可能性が大いにあります。

「子どものSOSは、いつでもチャンス」なのです。これは、不登校の対応に限らず、子育て全般に言えることです。このSOSは、問題行動だったりもします。子どもだって、親が望まないことを言っている(やっている)ことは、充分にわかっています。それでも、そうせざるを得なかったのです。その瞬間こそが、大きな問題解決のための絶好のチャンスです。

ここで、出来ることは、いつだって決まっています。「子どもの話を聞ききること」と「子どもとの時間を過ごしきること」です。ここで、“きる”と言っているところが重要です。仕事を休んで、話を聞けばよいということではありません。1番目の事例のお母さんのように、子どもが話しはじめるまで、1時間待つことだってあります。そこまでして、子どもから発信するのを待ったから、出てくる言葉があります。伝わる気持ちがあります。お母さんが、そこまでしてくれたら、その時点で子どもの心は満足して、問題を乗り越える力に溢れるでしょう。

体験談の3人のお母さんたちは、このことをちゃんと意識しておられたようです。特に、1番目の体験談では、5か月にわたる不登校の状態を、お子さんが最終的にぬけだして、一回り成長できたプロセスには、お母さんの、子どもの話を“聞ききる”姿勢と、子どもと“時間を過ごしきる”態度が常にありました。


次ページ「④不登校を解決するために知っておきたいこと」へ続く

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