第14回育児セラピスト全国大会in2023
次世代こども教育コンサルタント養成講座
毎年、全国大会で新しいスキルアップ講座をリリースしてきました。「“いま”現場で必要な知識とスキルを提供し、“これから”の仕事や活動に落としこむ」ことを、コンセプトとしてきました。ところが今年は、これまで一貫してきたものとは違うコンセプトの講座となりました。それは・・・
「“10年後”の世界に対応するために、“いま”からはじめる意識改革」
多くの方は、どう反応してよいか戸惑ったかもしれません。かく言うわたし自身も、講座を完成させるころに、ようやくこれがコンセプトであったことに気づいた次第です。このことを発見したため「この講座は、勉強会のようなカタチで、受講生のみなさんと一緒に作りあげる」という方針を、全国大会が直前に迫ったタイミングで打ち出しました。
つまり今年は、「学んだことを持ち帰って、現場ですぐに実践する」といういつものスキルアップではありません。「次世代にむけた未来の価値観を提示し、その世界観を描き、われわれ大人の意識を変えること」をテーマとしたスキルアップです。
われわれは、何のために「教育」を大事にしてきたのか?
われわれが身を置く「子育て・保育・教育」は、同一線上にあります。これまでは、子どもの年齢によって、家庭の子育て・保育園の保育・小学校からの教育と呼び名が変わってきました。いまや、その境目はなくなり、同義語になりつつあります。最終的には「教育」という言葉に集約できるでしょう。
そこで冒頭、ウィリアム・ジェイムズによる「教育の定義」から講座は始まりました。
「『教育のある人』とは、自分が今迄まだ一度も置かれたことのないような境遇に入っても、良く実際的にその困難を切り抜けることのできるような人のことである。」というジェイムズの言葉を引用して、教育とはなにかについて定義しました。
教育とは「子どもが大人になる」ためにとおる人生のプロセスであり、「人が幸せで豊かな人生をおくる」ために必要不可欠な手段であり、それを経済面と精神面の両面で実現すること、とまとめました。
世界の先進国とは逆の道を進んでいる日本がたどる現実とは?
そのうえで、いま日本で起きていることを検証しました。わたしの意見や憶測ではなく、事実の積み上げから導かれる“これから起こる現実”です。人口減少、高齢化、円安、これらの事実から導き出される現実は、高度経済成長の終わりと経済縮小の未来です。これはすでに始まっていて、みなさんが実感しているとおりです。
そこで、世界に目を向けてみましょう。日本よりも少ない人口で、世界をリードする国が存在します。ドイツや北欧諸国がそれにあたります。これらの国に共通するのは・・・
1.国民の労働生産性が高い(ひとりひとりが、よく稼ぐ)
2.教育制度が充実している(教育レベルが高い)
3.英語力が、世界トップレベル(世界で活躍できる)
この3つです。つまり、これから10年でこの3つを実現できれば、人口減少で世界経済から取り残されている日本が、再び世界をリードする国になる可能性もあるということです。しかし現状の日本は残念ながら、ドイツや北欧諸国のような人材を育てられる教育ではありません。むしろ、逆方向を進んでいると言ってもよいでしょう。
いま企業が求める人材は、優等生でも有名大学卒でもない
この事実からわかるのは、これからの時代に必要とされるのは、これまでとは全く違う人材である、ということです。
成績が良いだけの優等生は、もはや日の目を見ることはありません。学歴は何も保証はしてくれません。終身雇用も年功序列も終わりました。有名大学を出ても、一流企業に入れるわけではありません。たとえ一流企業に入っても、高い収入が約束される訳ではありません。アメリカではすでに、アップルやグーグル、IBMなどIT大手を中心に、採用における大卒や大学院卒の学位要件を廃止する企業が出ています。
代わりに重視されるのは、なにか?
答えのない問題に、自分なりのゴールを描き、そこに至る施策を見出せる。失敗してもあきらめず、結果を出すまでチャレンジをし続けられる。正しいやり方を教わるのでなく、自分で考え、調べ、最も効果的・効率的な方法を見つけ出す。ひとつの専門を深く掘り下げる。これからの時代に大事なのは、そうした能力です。
日本でも企業は、すでに後者の人材を獲得するために、採用基準や評価基準を改めています。前者のような人材は、もはや必要とされません。しかし、日本の親や教育者の多くは、いまだに過去の価値観で教育を捉え、前者の人材を育て続けています。
これから必要とされ、重視される「非認知能力」
ところで、両者の違いはどこにあるのでしょうか?
ひとことで言えば、「認知能力」と「非認知能力」の違いです。
これまで必要とされてきたのは、テストで良い点をとるための「認知能力」です。そして、これから必要とされるのは、高い労働生産性を発揮するための性格傾向や考え方、行動指針の基となる「非認知能力」です。この言葉は、最近の教育界で注目されているので、みなさんも最近よく耳にすると思います。
しかし、この「非認知能力」という言葉は、言葉だけが先行していて、結局どういうもので、どうしたらそういう能力がみにつくのか、どの発達段階で何をすればよいのか、それが、どのように人材の有能性と結びつくのか、といったことについて語られることは、少ないようです。
そこで、この講座では、非認知能力の育みと、育て方、そしてその後の活かし方について、0~17歳までを発達段階別に解説しました。
「世界の中のワタシ」を育てる子育て・保育・教育とは?
そのうえで、これからの時代に活躍する人材像を称して、「世界の中のワタシ」を提唱しました。毎度ご紹介している坂本龍一のこの言葉が、このコンセプトを象徴しています。「何人でもないコスモポリタンでありたいというのは10代のころから思っていたことです。地球のどこでも暮らしていける人間になりたいとずっと思っていました。」
「世界の中のワタシ」の必要要素は、2つだけです。
・非認知能力
・コミュニケーション手段としての英語
そして、「世界の中のワタシ」の育て方は、つぎの2つです。
・「世界」を実感できる幼少期の原体験
・発達段階に応じた体験(海外体験も含みます)
あとは、その子が持っている個性や得意によって、専門性や有能性をそれぞれの分野・業界で発揮して、高い労働生産性を実現してくれます。
子どもひとりひとりに個別対応した子育て
ここまでが、「次世代こども教育コンサルタント」に必要な前提論です。これを共有できたら、今度は実際に「どうやって」それを導くかについて学びます。そのテーマは、「個を知る」です。
これからの教育は、みんなで同じ方向に向かうものではありません。子どもひとりひとりの個性や得意、興味あるいは、性格傾向や衝動性、苦手や不得手に対応したOne to oneの教育です。そのためには、まず親は、“わが子”のことを知らなければなりません。しかし、それだけでは十分ではありません。親は、親自身のこともわかっている必要があります。
子育てとは、子どもと親の双方のアタッチメント傾向や性格、衝動性、コミュニケーションスタイルの掛け算だからです。子どもとの相性の悪い場面においては、子どものありのままのふるまいに対して、親が自らを客観視して、自分をコントロールする必要があります。そのため本講座では、「おとな心理分析」と「こども心理分析」の両方を学びました。
親を知る、子どもを知るための心理分析アプローチ
おとな心理分析は、つぎの3つの角度から見立てました。
その人の生き方の枠組みをあらわす「アタッチメント・スタイル5分類」、
その人の人間関係の運用方法をあらわす「コミュニケーションタイプ4分類」、
生き方・性分・性格・行動特性をあらわす「ライフスタイル4分類」
子ども心理分析も、基本的には同じ3つの角度から見立てます。
その子の対人関係における反応をあらわす「アタッチメント・スタイル3分類」、
他者や環境に対する反応やモノの捉え方、感じ方をあらわす「向性+感受性2分類」
育ってきた環境や家族布置によって方向付けられる「ライフスタイル3パターン」
この心理分析の枠組みは、パナソニックさんと共に開発した「親子診断」の元ネタとなるものです。これは、クエスチョネアによって、親と子どもそれぞれのタイプ分類がわかるというものです。将来的には、この「親子診断」と「次世代こども教育コンサルタント」が、コラボすることがあるかもしれません。
ユングがおしえてくれた心理分析では見えないパーソナリティ
こうした心理分析は、おもに人が生まれて育ってきた環境がどう影響して、結果としてどういうパーソナリティを形成したのかを見立てることができます。しかし、そもそもその人が持って生まれた性格傾向や衝動、有能性や劣等性については、言及されません。
それを見る術が、心理学にないわけではありません。それに着目したのが、心理学者C・Gユングです。彼が活用したのは、アストロロジーです。
ユング曰はく「太陽・月・惑星は、言ってみれば人間の性格のいくつかの心理学的あるいは心的構成要素を説明するものだった。そして、だから占星術は性格についてある程度妥当な情報を与えることができる」
アストロロジーは、現代ではスピリチュアルなどと言われることもありますが、4000年以上も歴史がある学問であり、万物の法則であり、政(まつりごと)の世界や、医学として王侯貴族に活用されてきた人類の智慧でもあります。そして、アストロロジーと心理学は、深い相関性をもった学問です。
「持って生まれた性格」を知る術としてのアストロロジー
人間の「持って生まれた性格」を知る唯一と言ってよい方法こそが、アストロロジーです。子どもは、パーソナリティの形成途上であり、環境要因によって日々成長し、変わっていく存在です。そこで大事になるのは、「その子が持って生まれた性格」がどんなものであるかです。これが環境要因と掛け合わさって、パーソナリティが形成されます。
さらに、親の「持って生まれた性格」を知れば、親子の関係性を見立てることが可能になります。親子関係は、選択された関係ではないので、あまり注目されませんが、「親子の相性」というのは、親も子も人間である以上存在します。
「親子の相性」がわかっているだけで、親は、相性の悪さで起こった出来事に無駄な罪悪感を抱く必要はなくなります。伝えたいことが、ちゃんと伝わる言い方や伝え方ができます。子どもの能力を伸ばす接し方をして、やる気をつぶすような行動や言動を押さえられます。これによって、非認知能力が豊かに育ちます。
アストロロジーは、心理学と通底していた
アストロロジーにおいて、月は「持って生まれた能力や性質」をあらわします。太陽は「月の要素を、人生でどう使って生きるか」をあらわします。これを見ることによって、「持って生まれた性格」を「どのように生きるか」が見立てられます。子どものそれを伸ばし、活かし、ありのままを認めて育てれば、それが、次世代の教育が目指すOne to oneの教育になります。
さらにアストロロジーは、人間の生涯における発達段階における法則(星座年齢)も見立てることができます。その人が生まれたその瞬間のホロスコープにおいて、各発達段階に由来する天体に、どの星座が位置していたかをみることで、その年齢帯のテーマや生き方の注意事項、目指すべき方向性などが読み取れます。子どものそれを見れば、その子の取扱説明書の役割を果たします。親(大人)のそれを見れば、これからの人生の方針や行き先、これまでの歩みの検証ができます。その法則は、まさにエリク・エリクソンの「ライフサイクル」さながらです。そこで読み解ける内容は、アルフレッド・アドラーの「ライフスタイル」さながらです。
ゆえに、心理分析とともにアストロロジーを活用することで、これまで心理分析では見過ごしていた側面に光を当てることができます。
「次世代こども教育コンサルタント」として、これをどう活用するのか?
別日におこなったDAY2では、コンサルタントとしての「活かし方の方向性」を学びました。この講座は、この先1~2年をかけて、勉強会の形で、実践例や実践方法を積みあげていきますので、現時点では「活かし方の方向性」という表現になっています。
ひとつは、「ライフサイクル」について、エリク・エリクソンだけでなく、これをフィールドワークに持ち込んだダニエル・レビンソンの両者から学び、アストロロジーにおける発達段階(星座年齢)を補完する試みをしています。これは、「親子関係や人間関係におけるコンサルテーション場面」で活用できそうです。両者を使いこなすと、アストロロジーで見立てて、ライフサイクルで根拠を示したり、具体的なアドバイスに落としたりすることができます。
つぎに、「親の教育方針の立案」や「子育て状況をヒアリングしたうえでの日常アドバイス」「具体的なアクティビティや学校選びにおけるコンサルテーション」の場面で活用できる知識とスキルを学びました。親の意識をどうやって変えるか、その家庭にあった教育方針と教育予算をどう組み立てるか、わが子の性格・衝動・得意を活かし、不得手や苦手が足をひっぱらないオンリーワンの道を探すための指針を提供する。そのための材料を提供しました。
この知識とスキルは、使い込んではじめて活用できる
「次世代こども教育コンサルタント」の知識とスキルのインプットは以上です。ここから、勉強会のカタチで、これらを実践的に活用できるようになり、さらにどのように実際の親子に提供するかを模索してゆきます。
最初は、自分の教室に来ているお母さんたちに、セミナー形式で話をするところから始めることになるでしょう。そこから、個別相談の機会を設け、「教育コンサルタントに、子どもの将来に関するアドバイスをもらう」という経験を提供します。これら一連のやり取りにおけるお母さんの反応を、勉強会に持ち寄って、さらにブラッシュアップしていきます。
最終的には、心理カウンセラーのようなカタチで、定期的に個別セッションを設けて、子育ての悩みや夫婦関係、教育の方向性の指南などの相談に乗るようなものになると、現段階では想像しています。
わたしたちがまず、答えのない問題に取り組もうではありませんか!
いずれにしても、これからの子育ては、専門知識をもった第三者による指南が必要な時代が訪れると思っています。「次世代こども教育コンサルタント」は、決して万人向けのサービスにはならないでしょう。しかし、ある種の人たちにとって、とても大事な存在になることは間違いありません。もしかしたら、他のプロジェクトとの相乗効果が生まれるのかもしれません。本当に未知数の試みの第一歩がはじまりました。これがカタチになったときには、みなさんにも改めてご報告いたします。 そして受講された方は、「答えのない問題に、自分なりのゴールを設定し、そこへ至る方策を練る」という“次世代的アクション”だと思って、非認知能力全開で、いっしょに取り組みましょう。
次世代こども教育コンサルタント養成講座
0期担当講師 廣島 大三