アタッチメント・ペアレンティング指導員

全国大会スキルアップ講座は、今年で12回目。その今回、前代未聞のことが起きてしまいました。これまで一度もなかったことです。想定外でした。なんと、今回のこの講座、2時間以上も延長したのです。0期は時間の見通しが立たないのは毎年のことです。それでも、これまでは、なんとか時間内か少しのオーバーで済んでいました。

(エンドの時間の制約で延長時間に参加できなかった方のために、講座の録画映像を後日視聴できるようにしました)

今回のコンテンツは、30ページほど整理したのですが、それでも足りませんでした。正規版のリリースまでには、さらに内容を厳選して完成度を高める所存です。考えようによっては、「幻のフルバージョン」と言えるかもしれません。

こうしたことを、「ラッキー!」ととらえ楽しんでくださる方もいれば、「時間守れよ」と不快に思われた方もいると思います。こんなことが起こるのも「0期」ならではです。多くの受講者さまが、常連の方たちだったので、そこはむしろハプニングを楽しんでいただいた雰囲気もあり、ほんとうに助けられました。ありがとうございました。それと同時に、みなさまの貴重な時間を、余分に使わせてしまいましたことを、この場を借りてお詫びさせていただきます。まことにご迷惑をおかけいたしました。これに懲りずに、今後もおつきあいくださいね!

アタッチメント理論に基づく子育ての実践・検証・体系化

さて、前置きが長くなってしまいましたが、本論に入ろうと思います。

わたしは、二人の娘の子育てを、20年をかけた縦断研究としてとらえて、アタッチメント理論に基づく子育てを実践してきました。今年2021年、次女が20歳をむかえ、わたしの研究は、区切りをむかえました。たった二人の対象では、学問的な価値も説得力もありません。

ところで、おなじ遺伝子、おなじ親、おなじ家、おなじ子育て方針のもとに育った二人の子どもが、どのように育ったか?その実践事例としては、充分に興味深く意義のあるものだと考えています。だからこそ今年、講座として体系化しようと決意しました。

背景が同じだからこそ、二人の共通点は、個人差に関係なく、どの子にも当てはめることができる要素。二人の相違点は、個人差によるところが大きい要素。そんな仮説のもとにすすめました。そうすると、じつに根源的な法則にたどり着いたのでした。それは、まさに「子育ての秘技」といってよいと思っています。0期の今回、それがどこまで伝わったのか、いささか不安も残りましたが、確かな手ごたえと、今後の展望が見えたのも本心です。

「ペアレンティング」について、そもそものところを考えた

「ペアレンティングとは?」という問いから講座がはじまりました。ペアレントの動詞活用形なので「親をする」というのが原義で、そこから「育児」となるわけです。この講座を、アタッチメント育児ではなく、「アタッチメント・ペアレンティング」としたのは、この親目線を強調したかったからです。

この言葉の発祥は、1958年アメリカです。知識や理論、手法を学ぶことによって、よりよい子育てを実現する、という考えから生まれました。しかしそれが高じて、アメリカのペアレンティングは、「親の望む子育てを実現する方法」という側面を強めていきました。

そこで本講座では、ペアレンティングにおける本質的なゴール(本当の親の願い)とは、いったい何なのか?そして、現実社会において、親が願うことやペアレンティングの現実について見ていきました。そのうえで、「ペアレンティングのあるべき姿=子育ての本質」を再確認しました。この本質を確認する作業を経てからでないと、本題には入れないのです。

ペアレンティングの答えは、アタッチメントにあった

「アタッチメント・ペアレンティング」の内容に入る前に、育児セラピスト2級で学んだ「アタッチメント理論・基礎」を前提に、現代のアタッチメント理論解釈について学びました。ボウルビイがアタッチメントを提唱した1970年代といまとでは、社会が大きく変わっています。アタッチメントの本質はなんら変わりありませんが、その枝葉については、時代に合わせて柔軟に解釈する必要があります。

そのうえで、「アタッチメント・ペアレンティング」の本論について触れてゆきました。そのコンセプトは、アタッチメントを基本方針とする子育てをすること、そのために体系化した育児法であり、育児理論であり、育児知識です。それともう一つ、親として10年先に結果がでることを、いまコツコツ取り組み、問題や悩みにあたったら、アタッチメントにその答えを見出す子育て。

このコンセプトのもとに、0~18歳までを、アタッチメント・ペアレンティングにおける5つの発達段階に分けたフレームをご紹介しました。各段階によって、親の行動や子どもとの距離感などを確認しました。

夫婦関係からひも解く「わたしの成り立ち」

講座では、夫婦関係も扱いました。夫婦という血のつながりのない家族という特殊な関係性だからこそ起こるコミュニケーションのズレや関係維持の難しさを見ました。そのうえで、時代背景と夫婦のあり方の変遷をみます。1970年代のあたりまえは、バブル崩壊の1990年代には崩れ、2000年代には価値観はさらに変わり、2015年以降の現代は、そこからまた大きく変わっています。そうした時代背景が夫婦関係と子育てに与える影響は、思っている以上に大きいです。そこからは、「親の夫婦関係=自分の育てられ方」、「自分の夫婦関係=自分の子育て」が客観的に見えてきます。これが最初のワーク「わたしの成り立ち」につながります。

教育をアタッチメントでとらえると「非認知スキル」にたどりつく

ここまで押さえたところで、アタッチメント・ペアレンティングにおける一番の興味どころである「教育」に入ります。最初に教育の本質を確認します。そうして見えてくるのは、子どもが大人になったその先も、幸せでゆたかに人生をおくれることです。それを左右する第一歩であり、影響力も大きいのが幼児教育です。これを、近年注目される「非認知スキル」の観点からひも解きました。

これまで重視されてきたのは、IQ(知能指数)やテストの点数といった「認知スキル」でした。しかし近年、J・ヘックマン博士によって明らかになったのは、学力や能力、収入、健康といった人が幸せに生きるのに重要な要素は、「非認知スキル」によるものだということ。その優位性は、40年後も維持されるということ。非認知スキルというのは、性格傾向です。集中力や自制心、やりぬく力(GRIT)あるいは、コミュニケーション力や共感力、社会性、道徳観といったものがそれです。

ちなみに、認知スキルに代表されるIQは、幼児期に高い得点をマークしても4年後には追い付かれてしまうことも分かりました。これまで、われわれは、子どもの教育において、大きな勘違いをしてきていたということです。

どんなアタッチメントを積み重ねてきたか = 非認知スキルの高さ

注目すべきなのは、非認知スキルの育ちとアタッチメントの密接な関わりです。それは、遠藤先生が講演でおっしゃっていたとおりです。アタッチメント理論に基づいて教育を考えれば、本質にたどりつくことができます。

そうは言っても現実の問題があります。「習いごと」をどう扱うか。スイミング、体操、ピアノ、学習塾、英会話・・・いまや何かしらの習いごとをするのはあたりまえ、毎日複数の習いごとを掛け持ちで通う子どもも珍しくはありません。

「学校選び」をどう捉えるか。小学校、中学校、高校をどうするか。お受験して小学校から付属に入れるのがよいのか、中高一貫校がいいのか。私立に行かせるお金がない場合、公立だとどうなるのか。子どもが学校に通うようになったら、親として何に注意すればよいのか。

教育に関して、親の悩みは尽きません。多くの親は、いまだにIQやテストの点数といった「認知スキル」ばかりを見ます。だから、たくさんの習いごとをさせたいし、よい学校にできるだけ早く入れたいと考えます。そうして教育が、子どもの有能性を阻むボトルネックになってしまうのです。

本質はむしろ「非認知スキル」です。それを前提にすると、習いごとをしているかどうかも、どこの学校に行くかも、じつは大きな影響はありません。小学校までで大切なこと、中学校時代に大切なこと、高校時代で大切なことは、それぞれ違います。それらの大切なことは、何を習っているか、どの学校に通っているかには依りません。講座では、それを解き明かしてゆきます。

同時に、子どもが将来どの分野にすすむか、どんな道にすすむかについては、親の期待どおりではないかもしれません。少なくとも言えることは、アタッチメントに基づいて教育を与えれば、なにかの道で、どこかの分野で、かならず有能性を発揮するということです。

親子関係は、子どものパーソナリティを左右する

さらに講座では、「親子関係」に入っていきます。子どものパーソナリティの育ちには、親の関わり方が大きく影響することはご存じのとおりです。われわれは誰しも、よき親、よき子育てを志向します。しかし、結果としてそうならないことも数多く起こります。アタッチメント不全、愛着障害がそれにあたります。

よき親、よき子育てのためには、何が重要なのでしょうか。まず重要なことは、子どもの“持って生まれた性格”を、親がよくわかっていることです。しかし、このことは、あまり意識されることはありません。

感受性の強い子は、慎重に手をかけて育てる必要があります。逆に大らかな子なら、あまり手をかけなくても順調に育つかもしれません。不適切な養育を受けても、それをはねのける強いパーソナリティをもって生まれる子もいます。適切な養育を受けても、感受性が強いためパーソナリティに傷を負ってしまう子もいます。“持って生まれた性格”によって、子育て方針は、変わってくるのです。

人間が「持って生まれた性格」を知る方法としての占星学

心理学者ユングは、この“持って生まれた性格”を知るために、占星学を用いました。講座では、ユングの用いた占星学による性格傾向を知る方法をご紹介しました。占星学は、たんなる星占いではありません。太古の昔から“まつりごと”つまり政治において、統治者の傍らにいたのは、占星術師でした。ホロスコープによるこの方法は、言ってみれば「子育てにおける奥義」です。

自分、パートナー、子どもそれぞれのホロスコープから、持って生まれた性格傾向を知ることで、子育ては圧倒的にやりやすくなります。また、子どもへの対応や接し方の見通しが立ちます。この恩恵は、わたしたちが思っている以上に大きなものであり、長期にわたるものです。受講生が、それぞれ自分のホロスコープを出して、占星学による持って生まれた性格傾向を知ることに取り組んだのが、2番目のワークでした。

家族布置から「育ちのなかで形成される性格」を知る

講座では、育ちの中で形成される性格についても扱いました。わたしたちは、意外と気にかけていないのですが影響が大きい要素に、家族布置ときょうだい布置があります。家族の中でどういうポジションだったかと、何番目の子どもとして育ったかです。

こうして生まれもった性格と育ちの性格を検討したうえで、親子関係を築いていくのが、アタッチメント・ペアレンティンにおける親子関係です。

子育て成功のカギは「子育て方針づくり」にある

そこからさらに、子育て成功のカギに入り、アタッチメント・ペアレンティングのまとめに突入します。これまでに学んできた知識や理論、枠組みは、ただ知っていればよいのでしょうか?闇雲に知識を広げたり深めたりすればよいのでしょうか?みなさんご想像のとおり、答えは“NO”です。

明確に言語化された「子育て方針」を、夫婦が共有して、しかるべき年齢になったら子どもとも共有して、その方向性の学びを広げたり深めたりする必要があります。現代は、情報が氾濫しています。なんの方針も持たないで情報を取りに行くと、かならず混乱し状況を悪くします。

そこで、10年後も、20年後も、子どもが自立した大人になるまで通用する「子育て方針づくり」について、4つのステップで、その作り方を解説しました。これは、家に帰ったあと、パートナーといっしょに、じっくりと時間をかけて取り組んでいただくものです。講座内では、その簡易版として、まずは「あなたの思う子育て方針」を作ってもらいました。これが、3つ目のワークです。

10年を見据えたライフプランをつくれば、人生は充実する

最後の章は、「自主取組課題」ということで、「ライフプラン」をご紹介しています。子育て中の受講生もいれば、わたしのように子育てを卒業した人もいます。それぞれ、人生の目的や優先順位は変わるでしょう。それぞれのライフプランを、いまから10年計画で作ることが目的です。そのための道筋をテキストにまとめています。

準備として4つ目のワーク「人生の優先順位を整理する」に取り組みます。生きるうえで優先順位は、非常に重要です。その割に、これを明確にしている人は、意外と少ないようです。優先順位が明確な人は、子育ても、仕事も、人間関係もうまくいきます。また、ライフプランを立てるうえでは、必要不可欠です。

そして、最後の5番目のワーク「10年後のライフプランをつくる」に取り組みます。ここまでを、受講生が自分で取り組んでみて、はじめてアタッチメント・ペアレンティングを人に教えることが出来ます。

「アタッチメント・ペアレンティング」を伝える

資格取得後は、教室やワークショップで、座学とともに、親御さんに、これら5つのワークに取り組んでもらいます。その恩恵は、実際にやってみたみなさんなら、わかることでしょう。

アタッチメント・ペアレンティング指導員養成講座の正規版リリースまでには、親教室用の座学テキストとワークを開発し、指導員が自由に使えるようにする予定です。0期の受講生からのフィードバックを基に、これから開発をすすめてまいります。どうぞお楽しみに!

アタッチメント・ペアレンティング指導員養成講座
0期担当講師 廣島 大三

アタッチメント・ペアレンティング指導員受講生の感想

あらためて、パートナーの存在の大切さを認識しました

私が思っていたことを理事長が話してくださって、納得することばかりでした。

今回の講座を通して「パートナーと・・・」と何度も出てくるところから、「パートナー」の存在、協力が大切だということを感じました。

仕事をしていて、お父さんの協力をお願いしてお父さんの協力を得られると生徒が変化していくところを何度も見てきました。あらためて、パートナーの存在の大切さを認識しました。

今回、女性ばかりで、ぜひ男性の方にも聞いていただいて父親の協力も伝えてほしいなと思いました。

公務員 40代 埼玉県

親の子に対するゴール意識、夫婦関係、発達段階に応じた対応の仕方などは、この世の中に必要な内容だと思いました

親が子に対して、どのように応答していくと良いのかを教えてくれるところはあるが、親の子に対するゴール意識、夫婦関係、発達段階に応じた対応の仕方などは、この世の中に必要な内容だと思いました。

内容も素晴らしかったのですが、理事長のお子さんが参加されたことで、ご夫婦がしっかりと子育てをされてこられたこと、アタッチメントがやはり大切であることを実感できました。

東京都

自分が親としてどうであったのか、振り返る場となりました

自分が親としてどうであったのか、振り返る場となりました。自分の子育ては、まあまあ良かったのかなと振り返ることができました。

その子の特性や考えを大切にすること、理解すること、見守ること、とても大切なのだと実感しています。

親と関わるためには、今回のワークのように深くは関われないことが多いのですが、学生の背景を少しでも知り、関わっていくことを実践していきたいと考えました。

看護教員 40代 神奈川県

これからの子育て支援で向き合っていかないといけないと思っていたことが取り入れられており、嬉しかったです

生まれた順番やHSP、発達の特性などで、子育てに特別な配慮が必要な子どもたちがいること、そして、その親もおそらく似たような苦労をしてきていること、社会の変化が子育てのあり様を変えることなどの要素が入ってきていて、これからの子育て支援で向き合っていかないといけないと思っていたことが取り入れられており、嬉しかったです。

子育ては孫育てがはじまって初めていろいろなことを何世代にも渡った視点で見直しをさせられることと、現実は我が子を助けたくても助けられない老いと、だからこそ何があっても生きていける力を子どもに残していける子育てをと思いました。

アタッチメント・ペアレンティングは大切です。

リトミックは認知スキルと非認知スキルを程よく混ぜた音楽メソッドです。なぜそれが可能か形にしたいものです。

リトミック講師 愛知県

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