優秀実践発表②:学びの素直さとめげない力で、ママから先生に

あそび発達インストラクター
輪田 英里さん
(福岡県)

「三歳児神話」を信じていたわたし

独身時代の10年間、保育士をしていた輪田英里さん。当時から※三歳児神話が気になっていたし、「3歳まではおうちでみたらいいよ」と先輩からも言われていた。そうしたこともあって、「自分が子育てをするときには3歳までおうちで自分がみたい」と思っていたそうです。

『三歳児神話』は、「3歳までは、お母さんがおうちで育児に専念しないと成長に悪影響を及ぼす」という考え方や、「3歳頃までの脳の成長は重要である」という考えに対する呼称として使われる言葉

いざ、子どもが生まれたとき、

「せっかく3歳まで一緒に過ごすなら、できることすべてしたい!」

「どうして3歳までが大切なのか?」

「3歳までの遊びが発達にどう影響を与えるのか?」

「どんな遊びが、効果的に子どもの発達を促すのか?」

それらを確かめたいと、輪田さんは考えました。どうしたら、これが学べるのか、インターネットで、いろいろ調べました。そのなかで、アタッチメントを学びのテーマとしている日本アタッチメント育児協会の思いに共感しました。さらに、輪田さんの興味にピッタリ答えてくれそうな講座をみつけることもできました。

それが「ベビーキッズ・あそび発達インストラクター」でした。「この資格を取りたい!学びたい!」とそのとき決めたそうです。

講座の一番の学びは、人の心理の原理に気づいたこと

講座のカリキュラムのなかの、育児セラピスト 前期課程(2級)のなかでおこなった、「コフートワーク」が、輪田さんには印象的で、多くの学びを得たと言います。これは、ハインツ・コフートの自己心理学にもとづいたセラピー型ペアワークです。

このワークで、輪田さんは、感情があふれて思わず泣いてしまったそうです。同時に、いくつかの気づきがあったと言います。

「人は自分の苦手なことや弱いことは隠していて、言葉にはしないでいること」

「苦手なことや、弱いところを話すと、その相手とすごく信頼関係が深まること」

「日常では、なかなか『褒められる』ということがないこと」

輪田さんは、とても本質的なことに気づかれています。それだけ素直に、真摯にワークに取り組めたという証です。こうしたワークは、輪田さんのように素直に取り組むと、もっとも深い学びが得られるものです。

ワークで感じた気づきから、「対お母さん力」をみにつけた

輪田さんは、この気づきを教室で応用して、お母さん方に、次のことを意識して関わっているそうです。

「自分の苦手なことも弱いところもさらけ出して話すこと」

「お母さん自身を褒めること」

「大好きを言葉にして伝えること」

これにより、「親密になれる」「親近感をもってもらえる」「お母さんの自己肯定感をあげる」ことに繋がっていることを実感していると言います。

興味は how to 、だけどそれを伝えるには理論が必要不可欠

それに対して「あそび発達」のカリキュラムについては、受講した当初、輪田さんはこんな感想をもったそうです。

「理論ばかりだな~、もっと~したらこうなる、こんな遊びをしたら、こんなふうに育つなどの遊び方が知りたかったなぁ」

しかし、資格取得後に、はじめての教室をやるときに、輪田さんは、カリキュラムの本当の意味に気づきました。教室の指導案をつくるとき、お母さんに実際に伝えるとき、理論を知って理解していないと、言葉にならない、伝わらない、話せない。

お母さんのわたしは、how to を求めていた!しかし、そのhow toを伝えるためには、理論が必要不可欠であること。how toを知っているだけでは、応用がきかないことに気づきます。

この気づきは、大きいです。ここに気づけていなければ、生徒さんたちは、輪田さんを先生とは認めなかったはずです。

「めげない力」は超一流

こうして、インストラクターとしての道を一歩踏み出した和田さんですが、転機は突然やってきます。2018年から、石川県で「あそび発達教室」を始めました。石川県野々市市保育園1歳クラス「家庭教育講座」、野々市市児童館サークル内「子どもアート遊び」、石川県立大学「足育セミナー」などと活動も広がったころでした。

2020年に、なんと夫の転勤により、福岡県へ引っ越しすることになってしまいました。それでも、輪田さんはめげません。イチから福岡の地で、お教室を立ち上げなおそうと、歩を進めます。

しかし、運命は、さらにいたずらしてきます。コロナ禍です。緊急事態宣言で対面の教室はできなくなりました。それでも輪田さんはめげません。対面がダメなら、オンラインだ!と、教室をオンライン化します。

輪田さんの「めげない力」は超一流です。こういう人は、お教室の先生に向いています。

輪田さんのこれからの展望

そんな和田さんの今後の展望は、

「お母さんそれぞれと1対1での関わりを濃くすること」、

「お母さんの声を聴く時間を多くとること」

だそうです。さすが、輪田さん。これは、どんな教室にもあてはまる教室運営において、もっとも核となる方針です。

そして、インストラクターとしては、情報交換、情報共有できる場をつくることと、そうした場で、お互いに質の向上をすることだそうです。そして、『お母さんが、安心して子育てができる社会』を目指すそうです。

わたしとしては、ぜひ、そこにお父さんやおじいちゃん、おばあちゃんも入れてほしいと思います。これからのアタッチメントのテーマは、アロマザリングですから。

廣島からの感想と応援

お母さんとしての輪田さんは、育児セラピスト2級カリキュラムから大きな学びを得ました。その学びは、のちの教室運営におけるお母さん対応で、輪田さん固有の強み(USP:Unique Selling Proposition)となりました。これは、マーケティングにおける最重要要素です。

さらに、その後インストラクターになって初めて、あそび発達のカリキュラムの意味を理解しました。理論や枠組み、メカニズムを理解することの意味を知りました。お母さんの興味関心は、具体的なhow to です。しかし、how toだけを教えたのでは、生徒からの信頼は得られません。説得力もありません。生徒は、最初は珍しがってくれても、すぐに離れてしまいます。長続きしない教室の多くは、これが原因です。

先生に理論が備わっているから、説得力がある。how toのひとつひとつに応用力が備わる。子どもの反応は、100人100色ですから、how toのとおりの反応などえられません。こうした説得力と対応力が、先生である礎です。だから、生徒は先生と認めてくれるのです。そして、先生と認めた生徒は、簡単には離れません。ほかのお母さんにもクチコミしてくれます。結果として、教室は長く続きます。

この学び方は、とても素晴らしいです。輪田さんも、大月さんと同様に、素直さが光っています。そういう人は、学び上手です。 学習というのは、発達と同じで順番があります。階段を一段ずつのぼる行為です。自分の子どものことを一番に考えるお母さんから、自分のまわりのお母さんと子どもたちのことまで考える先生になって、はじめて気づけることがあります。素直な人は、それらをその都度、背伸びせずに受け取れるのです。それが、じつは一番の近道なのです。

輪田さんからは、教室運営の基本とマーケティングのかなめを学んでいただけることと思います。個人教室に限らず、どんな形にしても当てはまることです。学びと示唆の深い発表をありがとうございます。輪田さんのこれからの活躍を、わたしも応援させていただきます。

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