日本保育協会・青森支部青年部主催「現場で役立つ保育研修」
「乳幼児期におけるアタッチメントの重要性と親子をつなぐベビーマッサージのチカラ」
2017年7月27日(木)、日本保育協会・青森支部青年部主催の保育士研修で登壇するために、青森県に飛びました。私にとっては、初・青森です。ちょうど「ねぶた祭り」の準備があちこちでなされていました。
青年部の方々と、前日のお食事会
前日に食事会にお招きいただきました。みなさん、保育園や子ども園の園長先生です。私のステレオタイプでは、園長先生は、年配の女性というイメージでした。実際、当協会の受講生にも、園長先生は多数お見えになりますが、多くは、私の抱くイメージの方々です。しかし、今回ご一緒した7人の方々は、みなさん30~40代の若手の男性の園長先生で、ある意味新鮮でした。
このような面々ですので、話は、当然のように保育関連になり、青森県の保育事情を色々とお聞きしました。東京でよく耳にするモンスターペアレンツの話や、子どもの教育の話、あるいは、保育士のこれからの話など、話題は多岐にわたりました。それらの話を私なりに総括すると、
「青森県は、保育園も父兄も園児も、人柄が良くて平和だ!」
です。本当に、園長先生方も、とても人が良く、父兄も園児も概ね平和で、都市部で聞かれるような心を病んでしまいそうな話は、あまり出ませんでした。
その一方で、青森県の保育園で深刻だったのは、保育士不足でした。それは、地方ならではの現象なのかもしれません。青森では、新卒の保育士の多くは、関東をはじめとする都会へ出て行ってしまい、地元になかなか残ってくれないそうです。関東圏の方が、給与水準が高いため、新卒に限らず地元の保育士が、関東へ流れて行ってしまっているのです。そのため、園長先生たちは、保育士の募集に大変な努力をされています。また、いま働いている保育士の働きやすさ向上や仕事の続けやすい環境なども工夫されておられます。そこまでしても、保育士不足は止まらないのが現状だそうです。
例えば、新卒保育士が、青森から都会に出て行って、保育園で勤めます。都会の保育園は、父兄との関係や他の保育士との関係など、様々な人間関係の緊張感があり、心的ストレスで辞めてしまう保育士も多いそうです。そうして、青森に帰ってきたとしても、地元で保育士を続ける人は、少ないのです。多くの人は、全く別の職業に就いてしまいます。
この話を聞いて、私は、「これは、青森にとってチャンスなのではないか」と思いました。都会の保育園では、保育士の心的ストレスが多いわけです。(一般論としてです。)かたや、青森の保育園は、平和でのんびりしています。そして、園も保育士に働き続けてもらえるように努力しています。つまり、青森育ちの保育士にとっては、地元の方が働きやすい状況なのです。でも、当の保育士本人は、地元の保育園の良さがわかっていません。さらに、実家に帰れば、家賃はかかりませんし、物価だって東京に比べたら、相当安いのです。つまり、東京は、給与水準が高いと言っても、よりお金がかかるのに対して、地元青森では、給与水準は高くないかもしれないけど、それに余るくらいお金がかからないのです。こうした青森ならではの特徴を、Uターン保育士や、地元の保育学生にアピールしていけば、慣れ親しんだ環境で働きたい保育士は意外と多いのではないかと思いました。
いや、もしかしたら、田舎暮らしと同じ原理で、逆に都会育ちの保育士に、こうしたコンセプトはうけるかもしれません。だとすれば、東京の保育士養成学校に求人営業をかけるというのも、ありなのかもしれません。過疎化した村の移住促進の事例などが、参考になるかもしれません。あくまで、思考の遊びですが、そんなことを思ったお食事会でした。
青森保育士研修会当日
研修会当日、100人近くの保育士さんに来ていただきました。受付では、私の著書である「アタッチメント・ベビーマッサージ」の本を置いていただいたのですが、青森の保育士さんは真面目な方が多いのか、研修が始まる前から、本を買われる方が多く、午前中には売り切れてしまいました。通常は、研修の間の休憩時間とか、研修が終わってからとかに買われることが多いのです。
さて、今回の講演の内容は、「乳幼児期におけるアタッチメントの重要性と親子をつなぐベビーマッサージのチカラ」です。前半では、アタッチメントの重要性のお話をして、そのアタッチメント形成のための最高の営みとしてのベビーマッサージのお話をしました。そして、お昼をはさんで後半では、実際にオイルを使ったマッサージを、二人一組で体験していただきました。今回は、保育士研修なので、ベビーマッサージの研修と言っても、ベビーマッサージのやり方指導ではなく、ベビーマッサージがお母さんに与える良い効果、赤ちゃんに与える良い効果、それらの効果とアタッチメントの関連性についてお話しました。
保育士養成課程で、学生時代にアタッチメントについては、みなさん学んでいますが、保育士経験を経て、保育や子育て支援、ベビーマッサージといった現場の文脈で改めてアタッチメントを学び直したのは新鮮だったようで、みなさん初めて聴く内容のように真剣に聴き入って、ノートを取っておられました。
そして、最後に、保育士として役に立つコミュニケーション術として、「対親力」についての話をしました。いまや保育士さんは、「子どもをあつかうプロ」であるだけでは務まらない時代になっています。親対応における知識とスキルが必要とされているのです。これについては、知識として知っている、スキルとして方法論を持っているだけでも、親とのコミュニケーションの結果は大きく違います。それを、われわれは「対親力」と呼んで、保育士にとって重要な要素と位置付けています。時間に限りがあったので、そのエッセンスをお伝えすることしかかないませんでしたが、知っているのと、知らないのとでは、大きな違いを生みます。
今回の研修を終えてみて、こうした保育士の方々が現場で活化していただけるという手応えと、その意義を感じることが出来ました。今後は、こうした個別のニーズに合わせた研修も積極的にお請けしてまいりますので、ご要望のある自治体、団体様は、ぜひご連絡ください。