第15回 育児セラピスト全国大会in2024 優秀実践者発表 産前・産後サポート部門 佐藤 裕子さん

地域における助産師の役割とは?

群馬県安中市に住む佐藤さんは、地域の助産師としてベビーマッサージやヨガを通して、子育て支援の活動をしています。出生率が減少する中、育児に困難を感じているママたちに向けて、心身のケアとサポートを提供することを目的としています。

少子化だからこその子育て支援の必要性

安中市の出生率は人口1000人あたり3.87と低く、減少傾向を示しています。令和5年の出生数は214人でした。それに加えて新型コロナウイルスの影響で、ママたちとの交流の場は減少し、オンラインや、対面でもソーシャルディスタンスが守られた場が増えました。このような状況下で親同士のつながりが希薄化し、地域での育児サポートがますます重要になっています。

ママたちからは、「サポートを得られる場が身近にいない」「実家が遠くて、夫婦共働きで頼る人がいない」といった声が上がっており、子育てをする親の孤立が深刻化しています。また、子育てに関する心配事が多岐にわたり、インターネットで調べて余計に不安になってしまうというケースも増えています。出産後の不安や産後うつで、育児に対する期待と現実のギャップを感じるママたちに、どうやって支援を届けられるかが大きな課題です。

いまだに存在するパパとママの育児ギャップ

佐藤さんは、支援活動をする中で、パパとママの育児における違いに気づきました。例えば、パパは赤ちゃんの泣き声に鈍感であったり、育児の負担をママに任せきりにしたりする場面が見受けられます。ある家庭では、パパが仕事から帰ってきて、自分のペースで過ごした後、夜11時になって赤ちゃんをお風呂に入れていました。このような育児に対する理解が乏しいケースが見られます。

また、夫にミルクを頼んだら、やり方がぎこちなかったり、赤ちゃんに「何で飲まないんだよ」と言ったりするのを見て、「自分でやった方が楽だ」と言うママもいます。そのことを夫に話しても「俺だって頑張っているのに・・・」などと言われると、それ以上は言えないようです。ママは、夫と話して共有したいと思うけど、十分に話せていないのが現状のようです。

最近では、パパの育児休暇の取得率が増えていますが、実際の育児時間におけるママとの格差は依然として大きいのが現実です。このような背景を受けて、佐藤さんは、ママたちが安心して育児に取り組める支援だけでなく、パパの育児参加を促すことにも取り組んでいます。

親子の関係性を深め、心を育てるベビーマッサージ教室

佐藤さんは、助産師としてアタッチメント・ベビーマッサージやキッズマッサージ、アタッチメント・ヨガを取り入れ、教室をとおして、ママたちに交流の場を提供し、育児の悩みを解消することを目的に活動を行っています。

この活動は、赤ちゃんの成長に良い影響を与えるだけでなく、ママ自身の心身のリラックスにも繋がっています。ベビーマッサージは、赤ちゃんとのスキンシップによって、迷走神経が刺激され、副交感神経が優位に働き、その結果心拍数が減少し、リラックス効果や消化器、内分泌系の働きも良くなります。また、オキシトシンの分泌が促されることで、精神が安定し、心が癒され、親子の絆が深まります。

特に、足のマッサージでは、赤ちゃんが気持ちよさそうに身を委ねる姿が見られ、ママもリラックスした表情を見せます。参加者からの「利用して良かった」という声も多く、赤ちゃんの眠りが深くなったり、便秘が改善されたりと、効果を実感するママも多いです。

母親の心身を癒す育児支援

また、支援センターで行っているアタッチメント・ヨガ(ベビー&ママヨガ)も、参加者から好評を得ています。赤ちゃんがママと同じポーズを取るなど、和やかな雰囲気を作り出しています。

また、この教室では、保育士が2人ついていて、赤ちゃんがグズってしまったときに、抱っこをしてなだめてくれます。おかげで、ママは赤ちゃんをお任せできます。これには、「安心して自分の時間を持つことができた」「リラックスできた」との声が上がっており、リピートにつながっています。

このように、アタッチメント・ヨガは親子の絆を深めるだけでなく、ママの心身のリフレッシュにも貢献しています。

未来を見据えた支援活動の重要性

子育て支援が必要な家庭は増えているなかで、佐藤さんが行っているベビーマッサージやヨガは、親子の絆を深め、ママたちの心を癒すという形で、大きく貢献しています。

佐藤さんは、これからも、こうした活動をとおして、ママたちの孤立感を解消し、より多くの親が支え合いながら育児を楽しむための大切な場を提供してゆきたいと考えています。


廣島からひとこと

今回の佐藤さんの発表では、助産師としての視点から育児における男女の実態が論理的かつわかりやすく示されており、非常に意義深い内容でした。

特に、男性の育児休業取得率が上がっているものの、現場での実際の父親の関わり方にはぎこちなさが残っている点や、育児に費やす時間が母親と父親で大きく異なる点が指摘され、興味深く感じました。このような状況は、10年、20年前から変わっていないところが多く、数値としての改善が進んでいても実態が伴っていないことを改めて実感させられました。

これからの社会では、父親が母親と同じように育児に関わるようになる必要があります。「ベビーマッサージ」は、その第一歩として大きな可能性を秘めています。 父親のベビーマッサージの取り組みをとおして、父親も、母親と同じテンションで育児をするようになることを期待します。佐藤さんの発表は、これからの子育て支援の方向性を考える上で、非常に深い示唆を与えてくれました。ありがとうございました。


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