Interview

出雲崎町(人口4,100人)のベビマ教室で「アタッチメント・ベビーマッサージ」を
すべてのママと赤ちゃんに叶えた13年間

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在宅保健師の和田多紀子さん。

新潟県長岡市内にある病院で助産師として6年、長岡市で保健師として14年間勤務した後、2009年4月に在宅保健師(個人事業主)となり、今年で14年が経ちました。

在宅保健師となる際に、「アタッチメント・ベビーマッサージ インストラクター」の資格を取得され、それ以降は依頼を受け、地域の子育て支援事業でベビーマッサージ教室を担当されています。

なかでも、新潟県三島郡出雲崎町でのベビマ教室は2010年から13年間に渡りました。

そんな和田さんから、これまでの活動についてご報告をいただきましたので、紹介します。

アタッチメントの理念に共感

和田さんは、2009年に在宅保健師として独立される際に、「地域の子育て支援に役立てたい」とのお考えから「アタッチメント・ベビーマッサージ インストラクター」の資格を取得されました。

「日本アタッチメント育児協会の、アタッチメント、お母さんと赤ちゃんの絆を深めるという理念にとても共感したことが決め手でした。」

現場で感じた「問題の根本はアタッチメント」

和田さんは、資格を取得する前は、助産師として6年、長岡市で保健師として14年働いていました。そのなかで、さまざまな母子関係をみてきたといいます。

「助産師時代には、普通に産んで普通に育つわけではないこと、未熟児だったり、障害を持つお子様をたくさんみてきました。行政の保健師時代は、発達障害、虐待、ご夫婦関係がうまくいっていないなど、ストレスを感じながら子育てをしていたり、泣きそうになりながら子育てしているお母さんたちをたくさんみてきました。やっぱり根本をたどっていくとアタッチメントに尽きるのかなという思いがありました。」

さらに、和田さんは現場で接するお母さんたちの自己肯定感が低いことも気になっていました。

「お母さんたちの自己肯定感を上げていきたいと思うと、やはりアタッチメントの理念に基づいたベビーマッサージが合っているのかなと受講に至りました。」

ベビーマッサージは特別ではない、印象的だった講師の言葉

講座を受講して印象的だったのは、講師の「ベビーマッサージというのは特別なものではない」という言葉だったといいます。

「授乳したり、絵本を読んだり、遊んだりと同じような、全くもって特別なことをするのではなく、そうしたことと同じ日常の営みのひとつなんだとおっしゃったことです。私の感覚では、お母さんたちは、“ベビーマッサージ”というと、すごく特別なことをするんだって思っている方が多いと思うので、ハッとした言葉です。」

その学びから、和田さんは教室にくるお母さんたちに「ベビーマッサージは、特別なことじゃなくて、日常のなかに取り入れられる簡単なことだよ!」と必ず伝えられています。

「教室では15分くらいかけて、丁寧にやったけど、時間がないときは2、3分くらいでやってもいいし、時間があるときは時間をかけて丁寧にやればいいからねと。『簡単だったでしょ?』とお母さんたちに聞くと、最初は身構えていたお母さんたちも『はい』ってうなづいています。」

答えは赤ちゃんが教えてくれる

マッサージの方法も、「この順番でこの圧で、こういう風に触るんだよ」ではなく「一番気持ちいい方法は赤ちゃんが教えてくれるんだよ」と講座で講師が伝えていたことを、いまも大切にお母さんたちに伝え続けていらっしゃるそうです。

資格取得後の活動

和田さんは、「アタッチメント・ベビーマッサージ インストラクター」の資格を取得後は、依頼をうけてベビーマッサージ教室を担当されてきました。

長岡市母子保健推進員(ボランティア)が開催する地区活動(2009年~2020年までの11年間、年に数回)でのベビマ教室や、一時期はご自身が主宰して教室を開かれていたこともあるそうです(現在は休止中)。

なかでも、長岡市の隣にある三島郡出雲崎町での活動は、2010年から今年の3月までの13年間にわたりました。

もともとは、出雲崎町の保健師の方が「アタッチメント・ベビーマッサージ」の理念に共感されたことから、和田さんに直接、依頼があったそうです。

出雲崎町での13年間

「出雲崎町は、人口4,100人の町で、年間出生数は10~20人前後です。その全員のお母さんと赤ちゃんにアタッチメント・ベビーマッサージを体験してもらいたいという保健師さんの強い想いがあってスタートしました。町の事業としてやっていたので、出雲崎町のお母さんにとって出産したら『アタッチメント・ベビーマッサージ』を習うのが当たり前でした。」

2010年から2017年3月までは、年に4回の乳幼児健診の際に、4か月児を持つ全てのお母さんにベビーマッサージを教えてきたそうです。

2017年4月以降は、出雲崎町に新しくオープンした「多世代交流館きらり(以降、きらり)」に場所を移し、月1回のベビーマッサージ教室にかたちを変えて続いています。

「乳幼児健診の場では親子に1回しか会えませんでしたが、きらりでは、毎月継続して参加される親子が多く、お子さんの成長を見るのがとても楽しみでした。お母様たちの雰囲気もよく、きらりで一番人が集まる講座として大切にしていただきました。」

平均して6組の親子が参加

和田さんのベビマ教室の流れは、パッチテスト、「アタッチメント・ベビーマッサージ」についての説明、手遊びをしてから、実際のベビーマッサージを行い、時間は40分ほどで構成しているそうです。お母さんたちからの質問や相談はさいごに聞いていたそうです。

きらりでの開催になってからは、近隣の市町村の方も参加されることもあり、多いときで10組、毎回平均して6組ほどの参加があったといいます。

「この13年間で出雲崎町の出生数が288人と聞いています。他市町村からの参加者も加えると、実に300組の親子と関わらせていただきました。」

お母さんたちの交流の場としてのベビマ教室

「お母さんたちは、ベビマ教室のあとはお互いの子育ての話をされたりして和やかに過ごされていました。冬場で外出しにくいときでも、みなさんいらっしゃっていたので、交流の場を求められて来る方が多い印象です。」

「そもそも地域で子どもが少ないので、同じ赤ちゃんをもつお母さんたちとの交流ができて、とてもよかった」という声が寄せられるといい、0歳児を持つお母さんがきらりに来るきっかけとしてもベビマ教室が機能しています。

13年間のさまざまな出会い

和田さんは「行政の依頼でここまで長く続いているのは珍しい事例だと思っています。」とお話しされています。

「つい先日も、この活動を依頼してくださった保健師さんと、私が当時ベビーマッサージを教えたお母さんと私の3人でお話していたところ、『うちの子、もう中学生になるんですよ!』と聞いて、3人でその感動を分かち合いました。」

ほかにも、ご兄弟全員、和田さんからベビーマッサージを習ったというお母さんがいたり、お父さんが参加してくれたり、おばあちゃんと親子3世代で来てくださった方もいたりと、13年間続けていると、さまざまな出会いがあったといいます。

無理強いしない、一人ひとりのペースを尊重する

教室のなかで、和田さんが大切にしていることがあります。それは、一人ひとりの赤ちゃんとお母さんの状況に合わせ、決して無理強いしないということです。例えば、赤ちゃんが泣いていたり、動いてしまってマッサージができないとき。

「『泣かせてまでやることではないよ』って言っていて、講座で習ったときにも言われていたことなので。毎月あるから、今日は泣いていてできないけど、みているだけでも参考になるからって言って、抱っこしながらみていてもらうときもあります。月齢がすすんで動くようになったら、『無理やりやらせるってことをしないように』って伝えていて、そのときできる手足と背中とお腹だけでもいいよって月齢に合わせた指導を心がけています。」

つながりを広げる工夫

さらに、きらりの職員の方にも声をかけて、教室のあるときはできるだけ同席してもらっていたそうです。

「私は月1回、教室のあるときしかいません。職員の方たちは毎日いらっしゃるので、お母さんたちと関係性ができるといいなと思って、声をかけさせていただいていました。だいたいは、きらりの保健師さんか助産師さんが一緒にはいってくださっていました。」

教室をすすめていくうえでも、泣いている赤ちゃんのフォローについてくれたりと、とても助けられたことが多かったそうです。

「きらりの職員の方たちには、お部屋の用意から温度調整などいつもきめ細やかな気配りをしていただいていました。そのおかげで、お母さんと赤ちゃんにとってより快適な環境でアタッチメント・ベビーマッサージに取り組んでもらえていたと思います。」

今後の展望

こうして13年間担当してきた出雲崎町での活動ですが、今年3月で卒業することになりました。かわりに4月からは当時、この活動を依頼してくださった出雲崎町の保健師の方の紹介で、新たに刈羽郡刈羽村のベビーマッサージ教室の講師を務められます。

「刈羽村の前任の助産師さんが、病院勤務となってしまい、新しい講師を探されていたところでした。これもご縁だと思い、片道30キロの行ったことがない土地ではありますが、引き受けることにしました。新たな場所でもアタッチメント・ベビーマッサージを広めていきたいと思います。」

また、ご自身の更年期がきっかけとなり、新たに「お母さんたちの健康づくり」に関しても伝えられることがあるのではと考え始めていらっしゃるそうです。

和田さんのご活動は、これからも続いていきます。

「このような長い年月にわたって続いている、日本アタッチメント育児協会、アタッチメント・ベビーマッサージは、本物の証だと考えております。私たちは、安心して活動することができます。いつもあたたかく見守っていただき、感謝申し上げます。」


和田 多紀子さん(新潟県) 在宅保健師

活かしている資格

アタッチメント・ベビーマッサージ インストラクター 〉

育児セラピスト前期課程(2級) 〉

育児セラピスト後期課程(1級) 〉

アタッチメント・キッズマッサージ インストラクター 〉

アタッチメント・ジム インストラクター 〉