Interview
“保育ママ”に従事して20年、ベビーマッサージがつなぐアタッチメントの輪
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田口いづみさんは、東京都新宿区で20年以上にわたり、「保育ママ」として家庭的保育に従事しています。
アタッチメントが保育の基本と考える田口さんにとって、2009年に取得した「アタッチメント・ベビーマッサージ」は、日常の保育のなかで欠かせない存在です。
そんな日々のベビーマッサージの取り組みは、やがてお子さんからお母さんへ伝わり「この子の喜ぶことを私も覚えたい!」とお母さんがベビーマッサージを教わりにくるという自然な流れがうまれているそうです。
日常保育での「アタッチメント・ベビーマッサージ」の実践を通してアタッチメントの輪を広げてこられた田口さんに、お話をお伺いしましたのでご紹介します。
指導計画のない子育てをしたいと退職
田口さんは、もともとは、東京都内で保育士として働いていました。結婚してお子さんができたタイミングで、いったん保育現場を離れたそうです。
「当時は、まだファミリーサポートなどもなく、早番・遅番時の預け先もありませんでした。それならば、『指導計画のない子育てをしたい』と、思いきって退職し、自分の子育てに専念しました」
その後、ご主人の仕事を手伝った時期もありましたが、「私はやっぱり子どもと関わる仕事が好き」との思いを強くされ、3人目のお子さんが小学校に入学するタイミングで、保育現場に復帰されます。
家庭的保育「田口いづみママ」の誕生
そんなある日、たまたま目にした新宿区の区報で「保育ママ」という家庭的保育の仕事の募集を目にしました。
「自分の好きな保育の仕事が、家でできる!と、さっそく保育ママを始めました。昨年でもう20年になります。自宅で、基本的には自分一人もしくはお手伝いの方に来てもらって、0~2歳までのお子さんを3~5人お預かりしています。」
田口さんの従事する保育ママは、60年ほど前に「女性にも仕事をつくろう」という時代の潮流のなかで、ボランティア的にはじまったものだといいます。
その後、だんだんと制度化されていき、現在は各自治体が管轄する地域型保育として機能しています。
「最近は、国や都から認証を受けた地域型保育として、地域に点在する小さな保育園の役割を担っています。」
アタッチメント・ベビーマッサージとの出会い
保育ママの仕事を始めてしばらくしたころ、田口さんが仲のよい保育士仲間2、3人で話しているとベビーマッサージの話題になったといいます。
「みんな、いろいろと研修を受けているうちに『ベビーマッサージっていいらしいね』という話がでて、それこそ、ベビーマッサージが紹介されはじめた最初の頃だったと思います。それで、どこかでベビーマッサージを1度ちゃんと、我流じゃなくて習ってみたいねと話していました。」
その後、ネット検索から田口さんは「日本アタッチメント育児協会」に出会います。
「きっかけは『アタッチメント』です。アタッチメント形成をメインとしている点が、そのほかのベビーマッサージよりも、仕事的にも自分の感性に合っているなと思い受講しました。2009年の受講なので、講座がはじまった初期の頃の受講生だったかと思います。」
実践したときに、ストンと腑に落ちた
受講した時は「いいものなんだな」と漠然とした思いでしたが、「ああ、やっぱり必要なものなんだな」と確信に変わったのは、実践して、お子さんの反応をみたときだったといいます。
「受講してすぐに、保育ママでお預かりしているお子さんにやってみました。その子の反応で、自分の中にストンと落ちていきました。受講した時より、実践した時にそれを感じました。」
あるお母さんの問いかけから気づいたこと
しばらくたつと、あるお母さんから田口さんにこんな質問がありました。
「先生、うちの子、寝るときに私にむかって足をポーンとだすのよね…何でかしら?」
田口さんは、すぐにその意味に気がつきました。
「お昼寝するときに、ベビーマッサージをやっていて、その子は足のマッサージが大好きな子でした。眠くなると、まず足のマッサージという子だったので、きっとお家でもやってほしかったのかなとお話しました。そのお母さんはそれを聞いて『私も覚えたい!』とおっしゃったので、お教えしたことがありました。」
そして、この出来事は田口さんにある気づきを与えました。
「先にお母さま方に『こういうのいいですよ』『こういう風にするといいですよ』ってお伝えするのではなく、『子どもが欲しているから私(お母さん)が覚えたい』っていうことも、すごく大事なことなんだなと思いました。お母さんの気持ちもその方が、より前のめりで聞いてくれているように感じました。」
その後、そのお母さんから「ベビーマッサージをやるようになったら、家でもすぐ寝るようになりました!」と聞いたことで田口さんのなかでひとつの想いが生まれます。
「私が、まず日々の保育のなかでお子さんに実践し、それでお母さんからうちの子こうなのよねって言われたときに、ベビーマッサージをお伝えしていけば、アタッチメント・ベビーマッサージを広げていけるのではないか、私はそうやって伝えていこう」と決意されたといいます。
日々の保育のなかで枝葉を広げる
田口さんの場合、人員や管轄の新宿区の規定により、保育のなかで、人を集めて教室を開くのは難しい状況でした。
「ただ、お預かりしているお子さま方については、あえて教室という形ではなくとも、自由にお母さん方に教えることはできる。いまお預かりしているお子さんと保護者の方、そのお友だち、そこをもとにして、徐々に広げていくことはできるのかなと思っています。まずは日々の保育で実践、お母さん方からのアクションがあると、お教えするという流れをこれまでずっと続けています。」
お母さんたちにベビーマッサージを尋ねられる、そのときを待ってお伝えしてきたそうです。なかには、目の見えないお母さんにも試行錯誤しながら覚えていただいたこともあったといいます。
講座を受講することでプラスαが増えていく
田口さんは、2009年のアタッチメント・ベビーマッサージの資格を取得後も、当協会の9つの講座を受講され、資格を取得されています。
(育児セラピスト、アタッチメント・キッズマッサージ/アタッチメントジム、アタッチメント・食育、アタッチメント・ヨガ、ベビー・キッズあそび発達、アタッチメント・発達支援、子育てマインドフルネス、アタッチメント心理カウンセラー)
「いまの自分に必要なところからとっていっているので、受講できていないものもあるのですが、自分の仕事で必要だと思うことは全部とってきました。」
それぞれの講座を受講すると、以前に学んだ部分で重複している部分は復習になり、それぞれの講座のテーマがそこから伸びる枝葉の部分として、どんどん枝葉が増えていく感じがすると田口さんはおっしゃっています。
「例えば、ベビーマッサージをやった後に、キッズマッサージをやるとベビーマッサージが基本にあったうえで、さらに発展していくよっていうのがわかるし、育児セラピストもそうですよね、親御さんのことがよくわかっていると伝え方もよくなるし、広まっていくなって感じます。どの講座にも同じことが言えて、アタッチメントジムにしても全部はできなくても、いまはこの年齢だからベビーマッサージが終わったらアタッチメントジムのこの部分はできるよねって広がっていきますよね。」
全国大会は復習の機会
田口さんは、秋にある全国大会にもご参加されています。
実技や実践に比べると、理論に対して少し苦手意識があるそうで、だからこそ、全国大会は「自分に対する復習の場」と捉えているといいます。
「例えばいくつか受けても、自分のものになっているのは1個か2個しかなくって…、でもそれが次を受けると、1個だったのが、1.2個くらいには増えていく。そうして身に付いたものが、ちょっとずつ広がっていくといいのかなって思いながら受講しています。」
資料があると伝わりやすい
最近、田口さんがお母さんたちにベビーマッサージを教える際に、感じていることがあります。
「きちんと資料があって、文章でこうなんですよって説明が載っていて、お伝えした方がわりと素直に受け止めてくださる方が多いのかなと感じます。」
そのため、保護者向けテキストをインストラクター専用ショップを通じてご用意されています。
用意した資料も、全てを一度に渡すのではなく、「その日にやったこと、覚えてもらいたいもの」にしぼって持ち帰っていただけるようにし、それをどんどんためていくと、ひとつの冊子になるよう工夫されているそうです。
お母さんが覚えたくなるようなきっかけをつくる
どんなときも、田口さんが大切にされているのは、「お子さんの様子が、お母さんのきっかけになる」という流れです。
それは、ご自身の保育ママのなかだけでなく、遊びに行った先の子育て支援施設で出会うお母さんたちに対しても同じだといいます。
「そこにいるお母さま方は、なにかを教えてもらいたいと思って来ているわけではないと思うので、お母さま方に寄り添いながら自分が一緒に遊んでいるお子さんに対して、例えばベビーマッサージやキッズマッサージなら『こういうことやると気持ちいいのよね~』っていう風にやって。子どもが気持ちよさそうになると、はじめてお母さんが『それなあに?』って興味を持ってくださるので、まず、お母さんが知りたくなるような、きっかけをつくるようにしています。」
いつかは「ばぁばの部屋」をつくりたい
田口さんには、今後の活動で思い描いていることがあるそうです。
「いまのお母さんたちで、同居されている方はとても少ないです。祖父母がいれば、ちょっと子どもをおいて出かけることもできますし、子育てのことも習うのではなくて、一緒にやりながら何気なく、こんなやり方もあるんだなと思ったりできますよね。自分がもう少し年齢が高くなって、いまのかたちで保育ができなくなったら、私がみなさんのおばあちゃん的な存在として、一緒に過ごせる『ばぁばの部屋』をつくりたいなと考えています。」
本当のおばあちゃんのおうちみたいな、お母さんがきたときにいろんなことを吸収して帰ってもらえるような、そのなかには、ベビーマッサージがあり、キッズマッサージやアタッチメントジムがあり、子どもと遊んでいるうちに「こんなこともあるんだ」と自然と必要なことが身についていくようなそんな場所を思い描かれているそうです。
保育の基本はアタッチメント
「すべての始まりは『アタッチメント・ベビーマッサージ』講座を受けたことから始まりました。それに出会っていなければ、もっと言うとアタッチメントという単語がなければ、この協会と出会うことがなかったかもしれません。」
「アタッチメントが保育の基本」とおっしゃる田口さん。
「目立ったことは何もしていませんが、これからも日常にアタッチメントがあふれる日々を子供たちと過ごし保護者の方や子育て支援施設で出会う方々にお伝えしていきたいと思っています。」
田口 いづみさん(東京都) 保育士・家庭的保育「田口いづみママ」
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