今、社会に求められているアタッチメントの力

宝塚大学 大阪梅田キャンパス
(2014/3/25)

「アタッチメントヨガ&「アタッチメントベビーマッサージ」/インストラクター資格取得をカリキュラムに導入/幅広い役割担える助産師養成

宝塚大学は2014年度に助産師を養成する助産学専攻科を新設する。同科において「アタッチメントヨガforマタニティ&ベビー」と「ABMアタッチメントベビーマッサージ」のインストラクター養成課程を導入する。導入の経緯や背景、今後の助産師に求められる役割などについて、看護学部長/副学長の柴田恭亮教授(2014年3月31日付退職)に聞いた。

柴田氏

宝塚大学は看護学部に加え、新たに助産学専攻科を新設する。近畿圏には助産師を養成する大学が少なく、大阪府では初の助産学専攻科誕生となる。

「保健師助産師看護師学校養成所指定規則の一部が11年に改正され、保健師と助産師の基礎教育における修業年数が『6か月以上』から『1年以上』に延長されました。このため、大学4年間の中での修業が難しくなり、1年課程の専攻科を新設することにしました。大阪という地域の特性を踏まえ、幅広い役割が担える助産師の養成に取り組んでいきたいと思います」と柴田氏は話す。

大阪府はHIV感染者数が全国第3位、児童虐待の相談件数が全国平均の約2倍と多く、母子保健や思春期保健に携わる専門職の必要性が高い。このため、助産学専攻科の新設は地域からも期待されている。

助産学専攻科の新設に際し、同学部ではアタッチメントベビーマッサージとアタッチメントヨガのインストラクター資格の取得をカリキュラムに導入した。その理由について柴田氏は「本学は芸術と科学の協調を建学の理念に掲げており、看護学部では芸術的な要素、つまり技を取り入れた科目を用意しています。助産学専攻科にもこの理念を生かし、分娩介助技術に加えてベビーマッサージやヨガを助産師の技術の1つとして身に付けてもらい、女性支援のための活動ができる助産師を養成していきたいと思います」と語る。

助産学専攻科での沐浴

助産学専攻科での沐浴の演習

インストラクター養成課程を導入するに当たり、同学部では教員2人にベビーマッサージ、1人にヨガのトレーナー資格を取得させるなど、1年がかりで開学の準備を行ってきた。両資格とも講義と実技、演習などに30時間かけて取得させる。

近年、助産師は分娩の場面だけでなく、女性を中心とした家族支援にまでその役割が広がっている。

「少子化や核家族化が進む中、子育て中の女性は孤立しやすい現状があります。アタッチメントヨガによって妊娠中から母子のアタッチメント(愛着関係)を育み、出産後はベビーマッサージでうまく赤ちゃんとの関係を作り、健全な母性を育てることで児童虐待を防ぐことができると思います。助産師は母親学級や両親学級、プレおばあちゃん講座などの講師も務めるので、父親や祖父母など家族支援にもかかわる仕事で、活躍の場が広がっています。アタッチメントを学ばせ、広い視野で活躍できる助産師を育てていきたいと思います」

「子育てを変えるチカラがある」
“アタッチメントのミライ”

廣島氏

一年にわたり、全六回で連載してきた本コラムも、今回で最終回となった。

医療、保育、地域の子育て支援、教育現場など、様々な現場における「アタッチメント」について触れ、アタッチメントの「子育て」における重要性と可能性について語ってきた。

いま日本の「子育て」は深刻な局面を迎えている。虐待やネグレクトといった、わかりやすい問題だけではない。子どもを置き去りにして外泊してしまう母親や、子どもを、所有物のように自分の言いなりにしようとする親のように、親本人に自覚のないケースの方が、むしろ深刻だ。

こうした親が、乳幼児期の子どもに与えるトラウマは、心の病の種を植え付ける。それは、思春期以降に、「ひきこもり」や「うつ」といった形で現れる。しかし、当の親には、自分が原因の大きな一端であるという自覚はない。

しかし事の本質は、親そのものではない。バートン・L・ホワイト博士が言うように、親に適切な知識がないまま、子育てが行われていることが、危機的問題なのだ。

親は、子どもが生まれると、突然「親」になるわけではない。「子育て」を通して、少しずつ「親」になっていく。そのプロセスこそが「アタッチメント」である。

アタッチメントとは、親が子育てをするうえで、知っておくべき知識であり、子育ての智慧である。だからこそ、それを学ぶ場と機会が、重要なのである。

本コラムで紹介したベビーマッサージ、キッズマッサージやマタニティヨガ、親子体操などの教室は、まさにそのための「場」である。

その様な場で、アタッチメントを知り、アタッチメントを感じることで、親は親になり、子育てに、これまで想像もできなかった程の幸せを感じ、子育てを楽しむようになる。

『アタッチメントには、未来の子育てを変えるチカラがある』
そのことを、最後にお伝えして、このコラムを締めくくろうと思う。

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