第10回育児セラピスト全国大会2019~この10年の子育て環境を振り返り、これからの10年を見据える~
スキルアップ講座
アタッチメント心理カウンセラー養成講座
育児セラピストのわたしたちだからこそ、
いまアタッチメントを学びなおそう!
「アタッチメントを学びつくす」というのが、今回のスキルアップ講座のねらいです。ジョン・ボウルビイがアタッチメント理論を発表してから、アタッチメント研究は、さまざまに広がり、深まり、活用され、そして新たな可能性を提示してくれています。これらは、すべて発達心理学、精神医学、臨床心理学、社会学、脳科学など、それぞれ別々の分野で、世代をまたいで起こっています。
まずは、それらを整理して「アタッチメントを学びなおす」ところから、講座ははじまりました。また、これまで講座の中ではあえて話をシンプルにするためにお伝えしていなかった用語や概念があります。これらについても、今回はきっちり取り扱いました。たとえば「内的作業モデル」。この専門用語は、これまで講座カリキュラムでは、あえて使ってきませんでした。しかし、「アタッチメントを学びつくす」上では、避けて通れません。
実際の講座では、思った以上にみなさんは、この専門用語を理解し、他の概念と結び付けておられる印象を持ちました。
新たなるアタッチメントのあり方
アタッチメントを学びなおしたあとは、現在のアタッチメントの位置づけと、これからのアタッチメントの行き先について見ていきました。「母子関係」や「ひとりの養育者」といったこれまでの前提を再定義し、アタッチメントに、現代の子育てに適応した解釈を加えました。その根底には、「乳幼児期の子育てを、母親ひとりはすべて背負う」ことが、理想の子育ての唯一の形ではないという考えがあります。
むしろ、「ヒトは、もともと集団型子育てを前提として、進化と発展を続けてきた生物だ」という人類学や進化学における事実に着目しました。「子育ては、様々な人たちに助けられて成立する」「お母さんひとりが、すべてを背負わなくていい」このことを、アタッチメントの視点から立証し、新しいアタッチメントの在り方を確認しました。
愛着障害における子ども支援・親支援、そして支援者支援
「愛着障害」これについても、今回は正面から扱いました。愛着障害の定義、発達障害との違い、専門用語としての扱い方など、愛着障害について語れるだけの基礎知識を、まずは学びました。そのうえで、愛着障害の子どもの支援とそれにつながる親支援に入りました。ここでは、大阪で講演していただいた米澤先生のご著書から多くの示唆を、カリキュラム中に頂戴しています。さらに、あまり取りざたされることのない「支援者の支援」も、心理カウンセリングという今回の講座の特性上、丁寧に扱いました。
「アタッチメント心理カウンセラー」に何が求められているのか?
心理カウンセラーと聞くと、心理の専門職や精神科医の分野で、自分には縁がないと考える人もいます。もちろん、治療家としての心理カウンセラーなら、そのとおりでしょう。しかし、身近な相談相手、カウンセリングの出来る支援者としての心理カウンセラーならどうでしょうか。そういう考えなら、みなさんの現場でも大いに活用できそうなイメージが湧きませんか?身近な人(みなさん)に悩みを相談したら、とても気持ちが楽になった。進むべき道が見えてきた。力が湧いてきた。
アタッチメントがカウンセリングに出会った瞬間
わたしも、実は10年前までは、「心理カウンセラーは、民間が手を出してよいものではない」という考えでした。しかし、近年アメリカをはじめとする心理臨床の業界では、先のような柔軟な考え方が主流になっているようです。
今回「アタッチメント心理カウンセラー」の中でご紹介するカウンセリング手法「メンタライジング」は、まさにそうしたコンセプトを持っています。
「メンタライジング」は、アタッチメント理論と精神分析を橋渡しした手法で、その基本概念は、アタッチメント理論に依拠しています。事実、メンタライジングの提唱者のピーター・フォナギーは、近代アタッチメント研究の第一人者でもあります。これに出会えたからこそ、わたしは今回アタッチメント心理カウンセラーに取り組もうと思いました。
メンタライジングの手法の中には、昨年リリースしたマインドフルネスも入っています。これは、意図したことではなく、偶然です。しかし、われわれにとって、これは偶然ではなく、必然だったのでしょう。
支援者としての次のステップを踏むきっかけにしてほしい
この講座を受けたある受講生から、こんな感想をもらいました。「アタッチメント心理カウンセラー養成講座は、今までの(アタッチメントの)学びの再確認以上の、確信に繋がる内容を学ばせていただき、誰に何をどのように伝えてゆきたいのかということを長年、悩んでおりましたが、糸口を見つけることが出来ました」
受講された方それぞれにとって、似たようなことが起きていると思います。それは、アタッチメントをきっちり学び尽くしたからこそのことであり、それを、大人に、親に、子どもに、支援者に、それぞれ活用するイメージを持つことが出来たことによるものだと思います。
それぞれの活動や支援のスタイル、立場に合わせて、この学びは、自由に活用できるようなものだと思います。
<文責>廣島大三
ベビマの教室や職場で相談にのる機会が多いです。ベビマの後は必ずティータイムをして参加者みなさんがそれぞれ(公表できること)悩みや愚痴を話したり、質問コーナーで話したり。1対1でベビマの説明をする時もそのままお悩み相談になることも多々あります。本当に色々な悩みを話してくれて泣きながら話し、帰りは笑顔で帰られる人もいます。そんな中、カウンセラーについて学びたいと思っていたところタイムリーな講座でした。
メンタライジングと昨年学んだマインドフルネスをしっかり活用したいと思います。今回の講座も、うん!うん!と心にくる内容でした。まずはメンタライジング能力を高めます!楽しみながら分かりやすい講座でした。本当にありがとうございました
(児童厚生員 49歳 秋田県)
学術的なことを知れて楽しかったです。また、発達障害と愛着障害の症状が同じでも、原因が違うが、アタッチメントはどの子にも有効ということが再確認できました。心理のカウンセリングというものに昔から興味があって、色々なカウンセリングの手法やマインドフルネスが少し分かり良かったです。
(保育士 59歳 愛知県)
子育ての環境が変化しており、子育てが難しい世の中になっている今日子育てが少しでも楽しいものと感じてもらえる手伝いができればと思いこの講座の受講を希望しました。世の中の変化を理解し、保護者に寄り添いながらも自分自身も研鑽を積み身近な相談者、支援者となりたいと思います。ありがとうございました。
(保育士 50歳 愛媛県)
どの様に相談者と対応し、声掛けすれば良いか具体的にわかって良かったです。実際に行ってみると難しいので、何度もイメージトレーニングをしたいと思います。逆にしてもらった感想としてはとても気持ちに寄り添ってもらえて気持ちが軽くなりました。今まで受講したものの振り返りにもなり、保育の場で使っていけて、とてもためになりました。ありがとうございました。
(保育士 40歳 千葉県)
産後子育てをするママの育児不安が増すなかで、それでも愛情を持ちながら育てるママと不安な余裕のなさから子どもと離れてしまうママを間近で見てきました。そんなママと子ども達に少しでもアタッチメントを育めるような手助けをしたいと思い今回受講させていただきました。私は心理学の大学を卒業していますが、アタッチメントを取り入れながらの心理カウンセラーはすごく興味深く、そして自分の中で一番理解しやすい内容でした。
今回は、子どもだけではなく養育者に焦点をあてた講座でしたので、より一層養育者への理解も深まりました。今後、子育てをするママ達の育児相談を受ける時は、相手の理解からスムーズに入れる気がします。
(助産師 46歳 群馬県)