第9回育児セラピスト全国大会2018「心を救うママケア」
マインドフルネスは、神秘ではなく科学です
まずは自分が「癒される」ためのマインドフルネス
東京と大阪で、「子育てマインドフルネス」の0期を行いました。意外だったのは、「マインドフルネス」は、多くの方にとって、それほど馴染みあるものではなかったこと。
『名前は聞いたことがあるけど、やったことはないし、どういうものかもよくわからない』という方が大半でした。それでも、興味を持って受講して下さった理由は、マインドフルネスが、「心を癒す」「ママを救う」ものだと、わかっていたからでしょう。
それと共に、受けに来て下さった方たち自らが、「癒されたい」ニーズを持っておられたのではないかと思います。かく言うわたし自身のマインドフルネスも、「自らの心の安寧」がテーマでした。「まずは、自分」これは、物事の本質です。
マインドフルネスという入り口は、現代人に最もしっくりくる
個人的な話をすると、わたしが、インドヨーガの瞑想に出会ったのは、10年以上前のことです。とても神秘的で、不思議なものだと感じたのを覚えていますが、日常の一部にはなりませんでした。その後、ヨーガをはじめて7年目をむかえています。こちらは、生活の一部となっています。そして今回、マインドフルネスの文脈で、理論や歴史、背景を研究するとともに、坐禅に出会いました。師は、曹洞宗・道元禅の禅僧で、わたしは、この師の教えに共感して、坐禅を進めています。
振り返ると、ヨーガ瞑想もヨーガも坐禅も、すべて同じゴールに行き着きます。「私が幸せであることを実感する」そして、マインドフルネスという入り方が、もっとも入りやすく、納得感があり、効果を実感できる、だから続けられる、楽しめる、と思うのです。講座では、これを伝えることに注力しました。
マインドフルネスを学問することの価値
講座では、まず子育てにおけるマインドフルネスの話から始まります。家族、夫婦、人生という子育ての切り口の中で、マインドフルネスはどう機能するのか。
そして、心理学でマインドフルネスを解釈します。そもそも、人の心の不調はどこから生じるのか、そのメカニズムを学び、マインドフルネスが、心の不調にどう対応するのか。その上で、今度は、われわれの軸である「アタッチメント」の文脈からマインドフルネスを解釈します。
この「心の不調のメカニズム」は、受講生のみなさんが、非常に合点がいったポイントだったようです。これまで、つかみどころがなかった「心の理解」が明確になった、と多くの方が感想で挙げてくれました。
心理学では、マインドフルネスを、日常生活に、そして人生に活かしていくイメージが出来たようです。そして、多くの方が、「マインドフルネスは、アタッチメントの修復作業である」というところに、大きな意義を読み取られていました。
理論編の核を学ぶ前に、まずは実践をしてみました
今回の講座では、理論編の核となる医学・脳科学編を学ぶ前に、マインドフルネス実践をしてみました。これは、「実践をして実感を得てから、理論を学ぶか、理論を学んでから実践の中で、それを感じるか」という学ぶ順序論なのですが、今回は、前者を採りました。
実践編では、ヨーガ・ヴェーダの監修をしていただいた森田尚子先生が登壇しました。ヴェーダの歴史から、ヨーガや瞑想との関係などを学んだ上で、実践に移りました。
始める・続ける・楽しむの3段階でマインドフルネスを習慣に
実践編は、やり方の説明ではなく、リトリート形式で、テキストに添って、実際にマインドフルネス実践をしていただきました。今回のメソッドは、「Begin はじめる」「Do 続ける」「Enjoy 楽しむ」という3段階に分けられています。その意図は、まず始めなければ、何も起こりません。しかし、マインドフルネスは、そのシンプルさゆえ、始めても続きにくいのです。そのため、誰でも出来て、覚えることもない簡単なメソッドから始めます。次の段階では、続けることをテーマにします。続けるためには、日常生活の中で、良い変化や効果が得られることが重要です。その意味では、ウェストのくびれから、怒りの対処まで、モチベーションが上がるメソッドに取り組みます。そして、より長く続けて習慣にするためには、楽しめないといけません。そのためには、目先の効果や変化よりも、人生が豊かになるようなテーマ、さらに、ある程度の難易度があるものに挑戦します。
「憑き物が落ちたの?」というくらい表情が変わった人も!
実践編のリトリートが終わった時のみなさんの様子は、明らかに違いました。中には、難しい顔をしていた人が、憑き物が落ちたのかと思うくらい、表情がやわらかくなったのが、見て取れる方もいました。
その中のおひとりの方の言葉が、とても記憶に残っています。その方は、すでにマインドフルネスを3年くらい実践してみえた看護師の方だったのですが、満面の笑顔でこんな風におっしゃっていました。
「もう、なんか無敵になった気分です。何でも来い!という感じ。」
「無敵になった気分」というのは、非常にステキです。それに加えて、この方の表情が、とてもステキでした。
リトリートでスッキリした理由、自分に起きたことのメカニズムを知る
最後に、今回の「子育てマインドフルネス」の理論編の核となる医学・脳科学をやりました。リトリートで疲れが取れたのか、みなさん頭はスッキリしていたようです。
まずは、医学におけるマインドフルネスの位置づけや扱われ方、その目的を確認しました。その上で、マインドフルネスを脳科学の視点で解釈します。脳のどの部位が反応し、どのような神経ネットワークを形成するのか、マインドフルネス瞑想によって、脳にどのようなことが起こっているのか、といった視点です。さらに、医学的エビデンスとしてのマインドフルネス研究を見ていきました。
この医学編を学んだ時、受講生のみなさんのマインドフルネス観が、神秘的なものから、科学的なものへとシフトしました。そして、マインドフルネスの効果がより身近に感じられ、信憑性が大きく増したようです。
そして、リトリートで経験したこと、観察できたことを、理論的に解釈し始めたように思います。
しめくくりは、無心のマインドフルネスで、目的を手放す
講座の締めくくりに、もっとも純粋なマインドフルネスのあり方、取り組み方について解説しました。「目的を手放す」というテーマです。最後は、自分自身とマインドフルネスが同一化して、何の目的もなく、効果を期待することもなく、日常の一部として瞑想するという世界観をご紹介しました。もちろん、これを目指す必要はありませんし、そういうものではありません。気付いたら、そうなっているもの。
そういう世界観を知識として知っておくのは、マインドフルネスの奥深さを体感するのに、とても良いのです。
マインドフルネスを数日続けたら、何が観察できたのか
3~7日間、マインドフルネスを毎日10分以上やってもらい、レポートにまとめてもらいました。非常に興味深く、マインドフルネスの可能性を感じさせてくれる結果となりましたので、受講後のアンケート共に、実践レポートもご紹介させていただきます。
自分は、いつも精一杯頑張りすぎていると感じた。失敗や不安に陥ったとしても、心を平常に戻すことに精一杯努力をしていた。平常に戻すことで無理やり心を安定させていたのかもしれない。自分自身のありのままを受け入れている状態ではなく、そこには無理が生じていたと改めて感じる。
自分自身を振り返り、内面を見つめられる余裕と、今自分がそこにいることを感じることだけて価値があることを感じることができた。
(62歳・福祉職公務員)
マインドフルネスと言う状態は、どんな状態であるのか、それを知りたいと思いました。今回面白かったのは、雑念がわいたときに、戻る場所を持つと言う事でした。「雑念はうかんだら、ただ流していく」というのが私の学んできたことですが、雑念を眺め、消え去ることを待つだけではなく、雑念に囚われている自分に気づいたら、ただ呼吸をしている状態の自分に戻る、戻る自分の場を持つことは新しい発見でした。
(58歳・日本アタッチメント育児協会認定講師)
今も毎日、短い時間ですがマインドフルネス実行中です。実感できる効果が続いていて毎日自分の感情の起伏に振り回されず、幸せな感覚を大切に出来ているように思います これからも続けていきたくさんの人に知ってもらいたいです
(35歳・主婦)
自分は日々疲れているのかも…と思いつつ、それを実感できるようになってきた。だからといって解決するわけではなく、日々の忙しさも変わらないのだが、その日常と向き合っている自分に対し、深く呼吸を意識することで、心がゆったりする隙間が空くような気もしてきた。
(48歳・保育士)
自分の呼吸を感じながら息を吸い、「ma-」と息を吐きだしていく事で、様々な雑念がなくなり心が解放感と自分の体に響く声が心地よくリラックスの状態となった。
息を長く吐き出す時間も日に日に長くなり、気管が弱かったのだが、肺から気管と全体が丈夫になったと思われる。
日々の忙しさから、自分の呼吸を聞く事を忘れている事に気付かされ、呼吸を感じ聞き、心で感じる事が出来る機会に出会えた事に感謝するとともに、自分が感じた体感を多くの方々に伝えていきたい。
(45歳・子育て支援NPO主宰)
「今」を生きることに目を向けず、時間に追われる日々をただ無意識に生きていた、と気付いた。常に頭で考え、勝手にあたふたしたり見えない物への不安や焦りを抱いたり、マインドレスの状態の私がいた。呼吸も浅くて上手くできていないことにショックも受けた。
取り組んでからの変化として、ストレス事項に対しての考え方の変更や気持ちの切り替えが、少しスムーズになったことを感じた。先が見えず不安になっているくらいなら「今」できること「今」やりたいこと「今」大切にしたいことに目を向けて一つずつ、一歩ずつ進んでいこうと思えるようになった。数日取り組む中で、様々な気付きや自分の可能性を感じることはできたので、やはり少しでも毎日続けることに意味があると思った。
(33歳・保育士)